ハイパーガニック―3Dプリントの設計をすべてアルゴリズムで―

3Dプリント(積層造形)する製品や部品の設計をアルゴリズムで行うサービスを手がける独スタートアップ企業ハイパーガニック・テクノロジーズ(ミュンヘン)が注目を集めている。雑な形状の物体でも人の関与なしに自動設計して、3Dプリンターでそのまま製造できるためだ。ソニー「ウォークマン」のデザインなどを手がけた高名なインダストリアルデザイナーのロス・ラブグローブ氏は、「設計方法のパラダイムチェンジ」だと称賛した。同社役員への取材をもとに『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が報じた。

ハイパーガニックはリン・カイザー氏が3年前に設立した企業。カイザー氏はもともと、デジタル映像の色彩加工技術を手がけるスタートップ企業イリダスを創設・運営していた。イリダスが米ソフトウエア大手アドビに買収された後はアドビに移籍したが、独立してハイパーガニックを設立した。

同社のデザイナーは独自作製した部品の一例としてFAZ紙の記者に、ロケットエンジン燃焼室を示した。燃焼室に関するデータを同燃焼室開発のために作成したアルゴリズムにインプットすると、バーチャルモデルがコンピューター上で作成される。このデータを3Dプリンターに送ると、実物が製造される。

この燃焼室には冷却材を流すためのチャンネルがジグザグに走っている。これについて記者が「チャンネルはなぜまっすぐでなく、ジグザグなのですか」と質問すると、デザイン担当者は「燃焼室の冷却におそらく最も適した形状であるため」と回答した。「おそらく」という一言を入れたのは、設計をすべてアルゴリズムが行い、人は一切、関与していないためだ。

同社が開発した自転車用ヘルメットも、交通事故に関するデータをもとにアルゴリズムで設計したもので、部位によって厚さが異なっている。

ハイパーガニックは欧米、東南アジア、中国の企業と協業。顧客企業が抱える問題の解決を模索している。

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