ドイツが誇る極上のデザートワイン「アイスワイン」が危機に瀕している。ドイツワイン研究所(DWI)は1日、2019年産は収穫が全くなかったことを明らかにした。同国でアイスワインが生産されなかったのは初めて。地球温暖化で生産条件を満たしにくくなっていることが背景にあり、DIWの広報担当者は「アイスワインの希少性は今以上に高まる可能性がある」と危機感を示した。
アイスワインは極甘の高級デザートワイン。気温がマイナス7度以下に下がったときにしか収穫できないというのが最大の特徴で、気温が低ければ低いほど、糖度が高くなる。暖冬で気温があまり下がらない年には収穫できないため、農家は大きなリスクを背負うことになる。
ドイツでは従来、冬の最低気温は毎年のようにマイナス7度以下に下がっていた。だが、近年は暖冬が続いており、収穫できないケースが増加。2013年、14年、17年産は極めて少ない。17年産を造ったワイナリーは全国でわずか7軒に過ぎず、今年はとうとうゼロになってしまった。過去10年間で当たり年となったのは12年と15年産だけだ。
温暖化でブドウの成熟が早まるとともに、寒波の初到来の時期が1月や2月と遅れる年が増えていることもワイナリーの頭痛の種となっている。成熟してから収穫までの期間が長引くことは、ブドウの実を健康な状態に保たねばならない期間も長期化することを意味するためだ。
アイスワンは日本や中国、スカンジナビア諸国、米国で人気が高い。希少性が今後、一段と高まると、それに応じて値段も跳ね上がり、めったに飲むことができない「黄金の雫」となる恐れがある。