ドイツ政府の諮問機関である国立科学アカデミー・レオポルディーナは13日、国内の感染者増加のスピードはこのところ大幅に鈍化していることなどを踏まえ、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために全国で行っている制限措置の緩和を提言した。同機関が「出口戦略」に言及したのは初めて。メルケル連邦首相と国内16州の首相はこれを受けて、15日の電話会談で制限の部分緩和を取り決めた。
レオポルディーナは『危機を持続的に克服する』と題した提言書を公開した。作成には幅広い分野の学識経験者40人が参加。ウイルス学など特定分野の学者の意見が突出することなく、総合的な知見を踏まえた内容となっている。
提言は市民の健康を最優先しなければならないとしながらも、移動や集会、信教、営業の自由が制限される異例の事態を解消していくことを検討する必要があると指摘。新規感染が低水準で安定化するとともに、感染防止に向けた衛生措置が順守されれば、爆発的な感染の再発を防ぎながら段階的に制限を解除していけるとの見解を示した。
制限緩和の前提となる衛生措置としては、人と人との距離を1.5メートル以上に保つソーシャル・ディスタンス、公共交通機関でのマスク着用などを挙げている。このほか、感染ルートの追跡を可能にするスマホアプリの投入、感染・抗体検査の拡大も必要との立場だ。これらの措置を導入することで数カ月後には1~2週間先の感染予測を立てることが可能になり、感染拡大が制御できるようになるとしている。
米ジョンズ・ホプキンズ大学によると、ドイツの感染者数は13日に13万72人となり、前日に比べ2,218人増加した。増加数はなお多いものの、増加率は大きく鈍化。感染者数が倍増するスピードは25.1日となり、外出・接触制限措置などの緩和の前提条件として独政府が提示していた同14日に比べ大幅に遅くなっていた。倍増ベースは3月1日が1.7日、4月1日が8.1日、7日が14.5日と時間の経過とともに鈍化する傾向にあった。
ロベルト・コッホ研究所(RKI)のロタール・ヴィーラー所長は14日、感染拡大の勢いが弱まっていることを受けて、国内の病院には現在、十分な規模の集中治療用ベッドと人工呼吸器があるとの見方を示した。