ユーロ圏19カ国は8日の財務相会合で、新型コロナウイルスの感染拡大が経済に及ぼす影響を最小限に抑えるため、ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)を活用し、各国の要請に応じて予防的な信用枠を設ける制度の詳細について合意した。ESM理事会による承認を経て、6月1日までに同制度の運用を開始することを目指す。
この支援はESMが高い信用力を背景に市場で低利で資金を調達し、それを新型コロナで厳しい状況にある国に融資するという仕組み。各国が対策に巨額の財政出動を迫られることで債務危機が生じ、国債の利回りが急上昇することなどを防ぐ狙いがある。新型コロナウイルスの感染が危機的な状況に達しているイタリア、スペイン、フランスなどが強く求めていたもので、4月9日のユーロ圏財務相会合で合意。同月23日のEU首脳会議で承認されていた。信用供は各国の19年末時点の国内総生産(GDP)の2%に相当する額が基準で、総額は約2,400億ユーロに上る。
今回のユーロ圏財務相会合では◇融資期間は最長10年◇信用枠供与の申請期限は22年12月末――とすることなどで合意した。
ESMは本来、金融危機に陥ったユーロ圏の国に支援を行う機能を持ち、支援を受けた国は欧州委員会の監視下で財政健全化を進めることを求められるというルールがある。オランダなどが新制度でも同ルールの適用を求めているのに対して、イタリアなどからは無条件でなければ利用しないという声が出ていた。
財務相会合は最終的に、未曾有の危機に直面していることを考慮し、このルールを適用しないことで合意。融資の用途を感染拡大の封じ込め、医療支援など新型コロナ対応に限定するという条件を付けるにとどまった。事実上の無条件といってもいい内容だ。
ESM活用はユーロ圏とEUが合意済みの総額5,400億ユーロ規模の経済対策の一部。このほか◇EUの政策金融機関である欧州投資銀行(EIB)が域内中小企業の資金繰りを支えるため特別基金を創設し、2,000億ユーロの融資を保証する◇欧州委員会の提案に基づき、域内の雇用維持に向けた1,000億ユーロの基金を設立し、EU各国が雇用を守る企業に手厚い助成を行えるようにする――ことが決まっている。これらの詳細は今後詰める。