フォルクスワーゲン―EV攻勢に向け中国の国営・電池企業に出資―

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW、ヴォルフスブルク)は5月29日、中国市場での電動車攻勢に向け20億ユーロを投資すると発表した。現地の新エネルギー車(NEV)合弁JACフォルクスワーゲンの経営権を獲得するほか、同国の電池メーカーに資本参加する。

JACフォルクスワーゲンはVWと中国同業の安徽江淮汽車(JAC)が2017年に設立した折半出資の合弁会社。VWは10億ユーロを投じて同合弁への出資比率を75%に引き上げるほか、JACの親会社である国営企業JAGに50%出資する。VWが中国の国営企業に出資するのは初めて。

VWは現地の電池メーカー国軒高科にも10億ユーロと投じて株式26%を獲得し、筆頭株主となる。中国の電池メーカーに外資が出資するのは初めて。NEVに搭載する電池を確保することが狙いだ。

国軒高科は寧徳時代新能源科技(CATL)、比亜迪(BYD)に並ぶ中国の主要車載電池メーカーで、安徽省合肥市に本社を置く。VWはJACと共同で同市にNEVの合弁工場を建設する計画であることから、これに用いる電池の供給を国軒高科から受けるとみられる。

VWは電動車の生産台数を今後、急速に増やしていき、2025年までに年300万台へと引き上げることを目指している。これを実現するためには欧州で150ギガワット時(GWh)以上、アジアでも同程度の電池セルを確保する必要があり、VWはすでにLG化学、SKI、CATL、サムスンの中韓4社をセルの戦略サプライヤーに選定した。これに加えて、スウェーデンの電池スタートアップ企業ノースボルトとともに独ザルツギターで電池を合弁生産することになっている。VWはプレスリリースで、国軒高科への出資は既存の電池サプライヤーとの契約に影響をもたらさないことを明らかにした。

JACフォルクスワーゲンの子会社化とJAG、国軒高科への資本参加には当局の承認が必要となる。VWはこれらの手続きの年内完了を見込んでいる。

上部へスクロール