温室効果ガス「30年に55%削減」、欧州委員長が目標の大幅引き上げを提言

欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は16日、欧州議会で一般教書演説を行い、2030年にEU域内の温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減するとの目標を打ち出した。EUは50年に域内で排出される温室効果ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指しており、実現に向けて削減目標を従来の40%から引き上げる。加盟国や産業界などの意見も踏まえて21年6月までに関連法案を提示する。

一般教書演説は欧州委が今後取り組む重要政策などについて説明するため、欧州委員長が毎年9月に行っているもので、フォンデアライエン委員長にとっては今回が初めて。同氏は「脆弱な地球の未来を考えると排出削減を早急に加速させる以外に道はない」と指摘。新たな削減目標は「詳細な影響評価に基づくバランスの取れた現実的な目標」であり、「EUの経済および産業は目標を達成できるし、それを望んでいる」と強調した。

温暖化対策で柱となるのは再生可能エネルギーのシェア拡大、EU排出量取引制度の拡充、自動車の二酸化炭素(CO2)排出規制の強化など。EU加盟国は7月の首脳会議で、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済を立て直すため総額7,500億ユーロの復興基金を創設することで合意したが、フォンデアライエン委員長は今回、基金の37%を環境関連の事業に投じることや、同枠組みで2,250億ユーロ規模のグリーンボンド(環境債)を発行する計画を打ち出した。全額を金融市場から調達する復興基金のうち、3割を環境債で賄うことになる。

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