メルセデスベンツ―収益力強化へ、EVアーキテクチャーは2種類―

独ダイムラーの乗用車・バン子会社メルセデスベンツ(シュツットガルト)は6日の投資家説明会で、収益力の強化に向けた戦略を発表した。自動車業界の構造転換を背景に落ち込んだ利益率が新型コロナ危機で一段と悪化していることに対応。コスト削減と競争力の強化を通して稼ぐ力を回復させる狙いだ。

同戦略は6本の柱で構成される。第1の柱は高級ブランドとしてのポジショニングをこれまで以上に明確化するというもので、製品ポートフォリオ、ブランドコミュニケーション、販売ネットワークを見直し、顧客が贅沢な体験を実感できるようにする。

第2の柱は利益を確保しながら事業を拡大していくというもので、販売量と価格、販売チャンネルのバランスを最適化するとともに、収益力の最も高い市場セグメントに開発資源と投資資金を重点投入することで実現する。

第3の柱はサブブランドのAMG、マイバッハ、G、EQのポテンシャルを引き出し、顧客基盤を拡大するというもので、これらブランドの収益力強化も図る。

第4の柱は顧客ロイヤルティを強化し、付加サービスや交換部品の販売、車載ソフトウエアの無線アップデート(OTA)、定期サービスを通して車両販売以外の分野で安定した売り上げを確保していく。メルセデスベンツの車両は2025年までに2,000万台以上がコネクテッドカーとなる見通しのため、ネットを通した販売に特に大きな期待をかけている。

第5の柱は車両の電動化と車載OSだ。電気自動車(EV)の分野では上級モデルに投入する専用アーキテクチャー「EVA」と中型車・コンパクトカー用のアーキテクチャー「MMA」の2種類を開発。EVAベースの車両は21年の「EQS」を皮切りに4モデルを市場投入する。MMAベースの車両は25年から販売する。

自動車には現在、多数の制御機器が搭載されている。これらの機器にはそれぞれソフトが搭載されていることから、スムーズに連携させるには労力と時間がかかる。このため自動車各社はすべての車載機器を一括制御するOSの開発に取り組んでいる。メルセデスベンツも「MB.OS」というOSを開発しており、24年から市場投入する計画だ。これによりソフトの頻繁な更新も可能になる。

第6の柱はコスト削減で、◇生産能力の調整と人件費の削減を通して固定費を19年比で20%以上、圧縮する◇設備・研究開発投資額を25年までに同20%以上、削減する◇変動費を25年まで、19年比で毎年1%引き下げていく。

これらの措置により売上高営業利益率(ROS)を25年以降、1ケタ台の半ばから後半、可能であれば2ケタ台へと引き上げる。メルセデスベンツのROSは19年に3.6%となり、前年の7.8%から大幅に低下。今年4-6月期(第2四半期)にはマイナス1.5%へと悪化した。収益力を強化することで、かつてのROS水準を取り戻す考えだ。