今年は新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、バカンス旅行を見送る人が多い。ドイツでは年度の早い時点で有給休暇と旅行の計画を立てる人が多いことから、旅行に行けずがっかりしている人は少なくない。では、一度受理された有給休暇を、コロナ禍を理由に取り下げることは可能なのだろうか。この問題を巡る係争でバイエルン行政裁判所が4月に判断を示したので、ここで取り上げてみる(訴訟番号:6 CE 20.94330.4.2020)。
裁判はバイエルン州の警察官が同州を相手取って起こしたもの。同警察官は有給休暇を利用して結婚式に出席するとともに、旅行に出かけることを計画していた。だがコロナ禍で結婚式は中止された。また、州保健省が移動制限措置を取ったことから、計画していた旅行を行うことができなくなった。
原告はこれを受けて、すでに受理されていた有給休暇の取り消しを要請。拒否されたことから提訴した。
バイエルン行政裁はこの係争で、原告の訴えを退けた。その理由として裁判官は、有給休暇の目的が心身の疲労からの回復にあることを指摘。この目的は旅行に行かなくても達成されるとの判断を示した。結婚式の中止についても、そのリスクを引き受けなければならないのは原告であり、被告の雇用主ではないと言い渡した。
重大な理由がある場合は有給休暇の延期を公務員に認める規定に絡んでは、原告のケースでは重大な理由はないとの判断を下した。
民間企業の場合、一度受理された有給休暇を被用者が一方的に破棄することはできない(公務員の場合も重大な理由がある例外的な場合に限られる)。そうした権利を認めると、人手不足が突然、発生し、業務計画の遂行に支障が出かねないためである。有給休暇を破棄するためには雇用主の了解を得る必要がある。