欧州連合(EU)の欧州委員会は1月25日、域外からの渡航に関する規制を強化することを加盟国に提案した。新型コロナウイルスの変異種の流入を防ぐためで、出発の72時間前までのPCR検査を義務付け、到着時に陰性証明書の提示を求める。さらに、入域から最大14日間の自主隔離を求める。
追加措置の対象となるのは、域外から公務やビジネスなど重要な目的で渡航する人や、観光客や短期出張者を受け入れる国のリストに入っている日本など8カ国からの渡航者。これらの国から戻るEU市民も含まれる。
感染力が高いとされる変異種のウイルスが確認された国からの渡航については、到着後のPCR検査も義務付けるなど、さらに厳しい措置を導入する。
欧州委は加盟国間の移動についても不要不急の旅行を控えるよう求めると同時に、加盟国の感染状況を色分けする制度で新たに「ダークレッド(暗赤色)」を追加し、加盟国に渡航規制を強化するよう提案した。
欧州委は加盟国の感染状況を新規感染者数、検査での陽性率などを基準に「緑」「オレンジ」「赤」「グレー」の4つに色分けしてきた。緑は過去14日間の人口10万人当たりの新規感染者数が25人未満、オレンジは同50人未満、赤は同50人以上となっている。グレーはデータが不十分で、明確に色分けできない状況にあることを示す。
新たにダークレッドを設けたのは、すでに多くの国で全土または一部の地域が赤を超えているため。過去14日間の人口10万人当たりの新規感染者数が500人以上の場合が該当する。欧州委はダークレッドの国から他の加盟国に入国する際に、事前のPCR検査を義務付けるよう加盟国に提案した。
EUでは新型コロナウイルス感染拡大の当初、国によって移動制限にばらつきがあったことから、20年9月に欧州委がEUレベルで協調することを提案。加盟国は10月に同方針を受け入れた。変異ウイルスによる感染拡大が懸念される中、加盟国が1月21日のEU首脳会議で各国が足並みをそろえて不要不急の移動制限を厳格化することで一致したことを受けて、欧州委は今回の提案に踏み切った。実施には加盟国の承認が必要となる。