自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は21日、欧州連合(EU)域内でグループが昨年、販売した乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量が許容上限を上回ったことを明らかにした。電動車の販売台数を大幅に増やしたものの、わずかに届かなかった。独メーカーでは高級車のメルセデスベンツとBMWが同規制を順守したことを明らかにしている。
EUではCO2の排出規制を順守できない乗用車メーカーに制裁金を課すルールが2020年に導入された。メーカーはEU市場での年販売台数に応じ、排出許容上限を1グラム超過するごとに1台当たり95ユーロの制裁金を課されることになっている。
EUのルールには、CO2規制を達成するためにメーカーが連合を組むことを認める「オープン・プール」制度がある。VWはこれを活用し、英MG、ロンドンEVカンパニー(LEVC)、独ネクスト・イー・ゴー、中国の愛馳汽車(AIWAYS)とプールを形成した。同プールのCO2排出量は走行1キロメートル当たり平均99.3グラムで、許容上限を約0.5%上回った。
VWグループに限ると同約0.5%超過の99.8グラムだった。主力のVWブランド乗用車とアウディでは規制を達成したとしていることから、シュコダなど両ブランド以外のブランドが足を引っ張ったもようだ。
VWグループはEU規制の達成に向け電動車の販売を強化し、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の欧州販売台数(EU27カ国に英国、ノルウェー、アイスランドを加えた30カ国)を昨年は前年比335%増の31万5,400台へと大幅に拡大した。この結果、走行1キロメートル当たりのCO2排出量は前年の平均124.0グラムから99.8グラムへと19.5%減ったものの、EUの許容上限をやや上回った。
これに伴い同社には1億ユーロ以上の制裁金が科される見通しだ。広報担当者はメディアの問い合わせに、引当金をすでに計上したことを明らかにした。20年10-12月期(第4四半期)の利益が圧迫されることはないとしている。
ヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は声明で、VWブランド乗用車とアウディに加え今後は「クプラとシュコダ(ブランド)でも魅力的な電動車モデル」を市場投入すると述べ、21年はEU規制を達成できるとの見方を示した。