独バイオ医薬品企業キュアバックは3日、新型コロナウイルス用の次世代ワクチンを英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)と共同開発すると発表した。新型コロナワクチンは計3種類の製品の接種が始まったばかりだが、ワクチンの効果を弱める変異種がすでに複数、出現していることから、両社は様々な変異種に有効であるとともに、今後発生するさらなる変異種にも速やかに対応できるワクチンを開発する。当局の承認を得て来年にも上市する計画だ。現在のパンデミック(世界的な流行)だけでなく、将来のエンデミック(感染の定着・恒常化)も視野に入れている。
医薬品として当局の認可を受けた新型コロナワクチンは、開発・認可手続きに問題のある中国やロシア企業の製品を除くと現在、独ビオンテック/米ファイザー連合、米モデルナ、英・スウェーデン企業アストラゼネカが開発した計3種類にとどまる。キュアバックのワクチン「CVnCOV」は治験段階にある。
新型コロナウイルスは頻繁に変異を起こす「RNAウイルス」というタイプのウイルスで、すでに多くの変異種が確認されている。そのうち南アフリカとブラジルで発生した変異種については体内で作られた抗体の攻撃をかわすことが報告されている。また、英保健当局は1日、同国の変異種「B1.1.7」から生まれた新たな変異種の存在を明らかにするとともに、新変異種は南ア種、ブラジル種と同様、ワクチンの効果を弱めるとの見方を示した。
キュアバックとGSKはこうした事態を踏まえ、CVnCOVベースの次世代ワクチンを開発する。具体的には、伝令RNA(mRNA)を最適化し十分な免疫反応が起こるようにする。また、ワクチンを製造しやすくするとともに、常温の2~8度で安定保存できるようにする。新型コロナワクチン未接種者のほか、ワクチンの効果が弱まった人に接種することを想定している。
今回の協業でGSKは最大1億5,000万ユーロを拠出する。まず頭金として7,500万ユーロを支払い、目標の達成度に応じて最大7,500万ユーロを上乗せする。同社は共同開発するワクチンをドイツ、オーストラリア、スイス以外の国で販売する。
両社はまた、新型コロナウイルスだけでなく呼吸器系疾患をもたらす他のウイルスにも効く新たなmRNAワクチンを共同開発するかどうかを検討する。
GSKは今回、キュアバックの新型コロナワクチンCVnCOVを年内に最大1億回分、生産することも取り決めた。ベルギー工場で製造する。同ワクチンは第2四半期に認可申請が提出される見通しだ。