鉄鋼系複合企業の独ティッセンクルップは10日の決算発表で2021年9月通期の利益見通しを上方修正した。20年10-12月期(第1四半期)の業績が良好だったためで、営業損益(EBIT、調整済み)を従来予測の「1億ユーロのケタ台半ばの赤字」から「ほぼ収支トントン」へと引き上げた。
第1四半期のEBIT(同)は7,800万ユーロとなり、前年同期の赤字(1億8,500万ユーロ)から黒字転換した。景気回復のほか、経営再建策の効果で業績が好転。売却・閉鎖予定の事業の受け皿部門である「マルチトラック」を除いてすべて利益を確保した。特に自動車部品(137%増の1億900万ユーロ)と産業部品(130%増の1億100万ユーロ)が好調だった。経営不振が続く鉄鋼も1億2,700万ユーロの赤字から2,000万ユーロの黒字へと転換した。
売上高はコロナ禍の影響で76億ユーロから73億ユーロに縮小したものの、新規受注高は6%増の78億ユーロへと拡大した。
鉄鋼部門に対しては英エネルギー・金属大手GFGアライアンス傘下のリバティ・スチールが買収を打診している。ティッセンのクラウス・カイスベルク取締役(財務担当)はこれについて、提案を慎重に検討するとともに、いくつかの問題を両社で集中的に協議していることを明らかにした。同部門をリバティに売却する可能性を排除していない。売却以外の選択肢としては手元にとどめることと、分社化を視野に入れている。3月に同部門の取り扱い方針を決めることから、リバティが買収に踏み切る場合はそれまでに拘束力のある提案を行う必要がある。