ドイツのアンゲラ・メルケル首相は22日に開催された与党キリスト教民主同盟(CDU)の会合で、抗原テストを大幅に増やすことでロックダウン(都市封鎖)を段階的に緩和していく意向を表明した。従来のコロナウイルスに比べ感染力の高い変異種の感染者数が急速に増えるなど状況は依然として厳しいものの、新規感染者数がピーク時に比べ大幅に減り、規制緩和要求が強まっていることから、頻繁なテストを通して感染リスクを引き下げ、制限措置を徐々に解除していく方針を打ち出した。ヘルガ・ブラウン官房長官を中心とする作業部会が具体案をまとめ、メルケル首相と16州の首相が3月3日に開く次回コロナ対策会議に提出する予定だ。
抗原テストは新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べるテストのひとつ。ウイルス独自のたんぱく質を検出することで感染の有無を確認する。ウイルスの遺伝子を増幅させて検出するPCR検査に比べ精度は低いものの、検査結果がすぐに得られることから、イベント会場やフライトなど迅速性が求められる場面で役立つ。
メルケル首相は抗原テストの大規模かつこまめな実施を通して、◇人と人の接触◇学校生活◇スポーツ、飲食店、文化活動――の3分野で規制を緩和する考えを示した。
抗原テストに関しては自治体の検査センターや病院、薬局を通して3月1日から無料で提供する意向をイエン・シュパーン保健相が表明していたが、キャパシティや準備不足などの問題が指摘されていることから、政府は22日の閣議で延期を決めた。国と州の3日の首脳会議で協議する。
感染者数の減少には最近、ブレーキがかかっている。人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数は16日に57人まで減ったものの、19日に58人へと増加。21日には61人まで拡大した。22日は60人に下がったものの、感染経路の追跡・遮断が可能な水準(同50人)を下回る見通しはやや遠のいている。変異種の増加が下方硬直化につながっている可能性がある。
英国種「B.1.1.7 」が流行する独北部のフレンスブルク市では同値が21日時点で173人に達した。新規感染に占める同種の割合は50%と高い。英国種の流行が始まる前は感染者数が少なかった。