フォルクスワーゲン―CASE戦略発表、20年代中に自動運転を大衆化―

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は5日、自動車業界の構造転換に対応するための新戦略「アクセレート」を発表した。車両の電動化だけでなく、IT化や新しい事業モデルの開拓に精力的に取り組み、「デジタルな未来に向けた道で加速する」意向だ。 VWブランド乗用車のラルフ・ブラントシュテッター最高経営責任者(CEO)は「わが社は今後数年でこれまでになかったほどの大きな転換を遂げる」と強調した。

自動車業界では車両の「通信端末化」「自動運転化」「シェア化」「電動化」を意味する「CASE」という構造転換が始まっており、各社は対応を進めている。

VWは排ガス不正問題発覚の翌年に当たる2016年、「トランスフォーム2025+」という名の戦略を打ち出し、ディーゼル車重視から電動車重視へと舵を転換。電気自動車(EV)専用車台「MEB」を開発し、昨年には初のMEB採用車「ID.3」を市場投入した。

同社はEV攻勢を加速する考えで、今回、欧州販売に占めるEVの割合を2025年までに従来計画の2倍の70%に引き上げる方針を明らかにした。米国と中国でも同50%を目指す。

車両の通信端末化の分野では車載ソフトを無線通信(OTA)で頻繁に更新するサービスを提供する。「ID.デジタル」という新設のプロジェクトユニットを通して今夏にもOTAサービスを開始する予定だ。更新は12週間隔で実施。顧客は常に最新のソフトを利用できるようになる。今後2年でVWのコネクテッドカーの累積販売台数が50万台を超えるとみている。

車両の通信端末化に伴いモデルバリエーションを削減する。ハードウエアでなくソフトウエアで差別化を図る考えで、顧客が望む機能をOTAで提供していく。付加機能などの販売を通して新たな収入源を開拓する。モデルバリエーションの削減には生産工程の簡素化とコスト削減というメリットもある。

26年にはフラッグシップEV「トリニティ」を市場投入する。同モデルは通信機能を通して交通・事故情報などを恒常的に相互交換するほか、最低でも「レベル2」の自動運転機能を搭載。将来的には「レベル4」を実現する。ブラントシュテッターCEOは「この技術は一部の人の特権になってはならない」と明言。多くの人が利用できるようにする意向を表明した。

VWはCASE化に向けて25年までに計160億ユーロを投資する。その資金を確保するため収益力を強化する方針で、23年までに固定費を5%、材料費を7%圧縮。工場の生産性は年5%のスピードで高めていく。

内燃機関車の開発は継続する。当面は必要不可欠とみているためで、「ゴルフ」や「パサート」「ティグアン」などの主要モデルについては次世代モデルを投入する意向だ。次世代の主要モデルでは電動走行距離100キロ以内のプラグインハイブリッド車(PHV)もラインアップに加える。

上部へスクロール