カーボンプライシングの相殺策導入、雇用と炭素リーケージにらみ企業に補助金

ドイツ政府は3月31日の閣議で、炭素リーケージ回避法案を了承した。二酸化炭素(CO2)排出有償化(カーボンプライシング)政策の影響を受ける企業に補助金を交付することで国際競争力を維持できるようにするとともに、コスト増を理由とする国外への生産移管を防止することが狙い。補助金の交付には欧州連合(EU)欧州委員会の承認が必要。法案は連邦議会(下院)の承認を経て施行される。

エネルギー業界やエネルギー集約型の製造業は2005年以降、EU排出量取引制度(ETS)の対象となり、割り当てられた排出許容量を達成できなかった企業は排出量を購入しなければならない。ドイツは国内のCO2排出量を30年までに1990年比で最低55%削減するという政策目標の実現に向け、1月からさらに非ETS部門のCO2排出も有償化する政策を導入。灯油やガソリン、天然ガスをカーボンプライシングの対象とした。

同制度はCO2の排出量購入を化石燃料の販売事業者に義務づけるというもの。購入価格は25年まで固定価格とし、26年からはオークション方式へと移行する。固定価格は初年度の21年が排出量1トン当たり10ユーロで、その後は22年が20ユーロ、23年が25ユーロ、24年が30ユーロ、25年が35ユーロと毎年引き上げられていく。

この政策の影響で国内製造業の価格競争力が弱まり、CO2排出規制の緩い国への生産移管が進むと、国内雇用が失われるうえ、世界全体で排出されるCO2の量は減らないという炭素リーケージ問題も発生することから、カーボンプライシングのしわ寄せを受ける企業に補助金を交付し、そうした事態を回避する。約1,500社が受給する見通し。

補助金を受けた企業はその一定比率以上をエネルギー効率の改善やCO2排出削減など温暖化防止策に投資することを義務付けられる。同投資比率は22年までが80%以上、23年と24年が50%以上となっている。受給企業には補助金の適正使用を証明する義務がある。

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