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2021/4/28

総合 - ドイツ経済ニュース

全国一律のコロナ規制開始、夜間外出規制は当初案より緩和

この記事の要約

新型コロナウイルスの感染拡大防止策をドイツ全国で一律化することを柱とする改正感染防止法案が22日までに連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)で可決・承認された。同法はシュタインマイヤー大統領の署名を経て23日に施行された。 […]

新型コロナウイルスの感染拡大防止策をドイツ全国で一律化することを柱とする改正感染防止法案が22日までに連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)で可決・承認された。同法はシュタインマイヤー大統領の署名を経て23日に施行された。

ドイツのコロナ規制はこれまで、メルケル連邦首相と国内16州の首相の会議で決定してきた。規制権限を州が持っていたため、全国一律の規制を国が制定・実施することはできないという事情があった。

各州の足並みをそろえるために開く同会議では利害や思惑を背景に意見調整が毎回、難航した。また、ようやく成立した合意を順守しない州は少なくなかった。

こうしたちぐはぐな状況はコロナ対策に対する国民の信頼を損なっていたうえ、感染拡大に有効に対処できないという問題も引き起こしてきことから、政府はそうした事態を改めるため今回の法案を作成した。人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数(7日間の発生数)が3日連続で100人超となった地域に「緊急ブレーキ」という規制を例外なく適用し、各州の裁量の余地をなくすことが狙いだ。

政府法案には、◇21~5時の夜間外出が原則禁止◇食料品店や薬局、ドラッグストア、本屋、花屋など一部の例外を除き小売店の店舗営業が禁止◇私的・公的な場を問わず家族以外の人と会うことが大幅に制限◇対面授業を行う学校に週2回、抗原検査の実施を義務付け、7日間の発生数が3日連続で200人を超えた地域では対面授業が禁止――などの規制を適用対象地域で実施することが盛り込まれていた。

このうち夜間外出禁止については野党だけでなく与党内からも批判が出たことから、与党は法案を修正。外出禁止の開始時間を22時へと1時間遅らせるとともに、22~24時については1人での散歩やジョギングなどの運動を認めることにした。また、対面授業の禁止ラインを200人から165人へと引き下げた。さらに、7日間の発生数が150人以下の地域では事前予約と陰性証明の提示を条件にすべての店舗での買い物を認めることにした。

改正法ではこのほか、雇用主から在宅勤務の提案を受けた被用者は原則としてこれを受け入れなければならないというルールも導入された。これまでは在宅勤務の提案を雇用主に義務付けるルールはあったものの、被用者は拒否できた。今後はIT環境がないなど自宅で業務ができない正当な理由がない限り在宅勤務の提案を受け入れなければならない。

緊急ブレーキは24日から適用された。全国412地域の81%に当たる333地域が該当している。

一方、政府は21日の閣議で、新型コロナ感染を予防するための政令改正を承認した。企業は出社するすべての社員に感染の有無を調べる抗原検査などを週に2回、提供することを義務付けられる。20日に施行されたばかりの同政令では提供義務が原則的に週1回となっていたが、「ウイルスを全力で阻止しなければならない」(ハイル労相)として企業の義務を強化した。

接種完了者は制限緩和へ

メルケル首相と国内16州の首相は26日のテレビ会議で、新型コロナに絡む政策を協議した。今回は各州の政策調整を話し合う従来の協議と異なり、ワクチン接種キャンペーンの今後の見通しと、接種完了者の取り扱いを論議。接種完了者については制限措置を緩和することを決めた。

同国ではこれまでに人口の23.4%が少なくとも1回の接種を受け、7.2%は2回目も受けて接種を完了した。接種完了者は感染リスクが低いことがロベルト・コッホ研究所(RKI)の調査で明らかになっていることから、これを踏まえて制限措置の緩和を決めた。対象者は買い物や理容・美容院の利用の際に簡易検査で陰性を証明する義務や、外国からの帰国の際に自主隔離する義務を免除される。新型コロナに感染した人で快復後6カ月以内の人は1度の接種を受ければ接種完了者と同等の扱いを受けることができる。マスク着用、社会的距離、衛生規制は引き続き適用される。

政府は今後、接種完了者に関するこれらのルールを改正感染防止法の規定に基づき政令化。連邦議会と連邦参議院の承認を経て施行する。

接種キャンペーンは市民を年齢、重大な基礎疾患の有無、職業に応じて4グループに分けたうえで、優先順位を設けて展開している。年齢別では80歳以上が第1優先グループ、70歳以上が第2優先グループ、60歳以上が第3優先グループとなっており、60歳未満は順番の最後に回される。多くの州ではすでに第1・第2優先グループで少なくとも1回目の接種が終わった。第3優先グループも5月中に1回目の接種が終了する見通しだ。メルケル首相は会議後の記者会見で、遅くとも6月にはすべての希望者を対象に接種の予約受付を開始できるとの見通しを明らかにした。夏期が終了する9月下旬までに全希望者の接種を完了できるとしている。