ドイツのバイオテクノロジー企業が2020年に調達した資金の総額は30億4,600万ユーロとなり、これまでの最高の18年実績を146%上回った。新型コロナウイルスの感染拡大を背景に一部の企業が巨額資金を獲得したことで、水準が押し上げられた。監査法人大手のアーンスト・アンド・ヤング(EY)が作成した2021年版『ドイツ・バイオテクノロジー・レポート』で分かった。
同レポートでは資金調達源をベンチャーキャピタル、新規株式公開(IPO)、フォローオン、転換社債の4つに分類している。20年は転換社債が前年比943%増の4億8,200万ユーロ、フォローオンが570%増の12億4,200万ユーロ、新規株式公開(IPO)が130%増の4億3,900万ユーロ、ベンチャーキャピタルが84%増の8億8,200万ユーロとすべて急拡大した。EYの調査担当者は「2020年はドイツのバイオ業界にとってあらゆる観点でただならぬ年だった」と述べた。
資金調達額が特に多かったのは新型コロナワクチン開発に着手したビオンテックとキュアバックで、合計額は15億5,000万ユーロと、独業界全体の半分以以上を占めた。
IPOを実施したのはキュアバックとがん治療薬開発のイマティクスの2社。調達額はそれぞれ2億1,500万ユーロ、2億2,400万ユーロに上った。
キュアバックは政策金融機関のドイツ金融公庫(KfW)を含めベンチャーキャピタルからも総額5億6,000万ユーロを調達した。同国のバイオ業界がベンチャーキャピタルから獲得した資金全体の63%を占める。
ビオンテックとキュアバックの効果で、上場するドイツのバイオ企業の時価総額は昨年495億ユーロに達し、前年の235億ユーロから111%拡大した。時価総額が最も大きいのはビオンテックで164億ユーロ(前年70億ユーロ)に上る。2位はキュアバックで117億ユーロ。これにキアゲンが98億ユーロ(68億ユーロ)、エボテックが50億ユーロ(35億ユーロ)、モルフォシスが31億ユーロ(40億ユーロ)で続く。
バイオ業界の企業数は前年比1%増の710社と微増にとどまったが、売上高は36%増の64億9,000万ユーロと大きく拡大した。研究開発費も37%増えて24億6,000万ユーロとなった。