新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、感染者に濃厚接触した人は自主隔離を義務付けられている。そうした人を解雇することは不当とする判決(訴訟番号:8 Ca 7334/20)をケルン労働裁判所が下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は雇用規模10人未満の屋根葺き会社に勤務する被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。原告はコロナ感染が確認された義理の兄弟に接触していたことから、2020年10月後半に保健所から電話で隔離を命じられた。仕事柄、勤務できなくなったため、事情を被告に伝えたところ、隔離命令を保健所から文書で取り寄せ提出するよう要求された。ズル休みを勘ぐられたのである。
原告は隔離命令文書の送付を保健所に電話で要請したが、文書は数日たっても送付されなかった。被告は原告が同文書を提出しないことから、10月26日付の文書で11月8日付の解雇を通告。原告はその無効確認を求めて提訴した。
被告は裁判で、雇用規模が10人未満の企業は解雇理由がなくても被用者を解雇できるとした解雇保護法(KSchG)の規定を根拠に、原告の解雇に問題はないと主張したものの、ケルン州労裁は解雇無効を言い渡した。判決理由で裁判官は、被告企業には解雇保護法が適用されないことを確認したうえで、当局から隔離を命じられた被用者を解雇することは、公序良俗違反(Sittenwidrigkeit)の法律行為を禁じた民法典(BGB)138条と、信義則(Grundsatz von Treu und Glauben)を定めたBGB242条に抵触するとの判断を示した。