サプライチェーンに革命、自動車業界がデータネットワーク構築へ

ドイツの自動車業界が匿名かつ安全にデータを交換するプラットホームの構築に乗り出した。参加企業はコストや労力を削減できるだけでなく、部品不足の危機や二酸化炭素(CO2)排出削減などの課題に対応しやすくなり、国際競争で有利な立場を確保できるようになる。

大手自動車メーカーはこれまで、各社独自のプラットホームを通してサプライチェーンを管理してきた。取引先企業は登録したうえでデータを提供している。これらのプラットホームでは同一の情報が複数、入力されたり、情報変更に手間がかかったりと大きな負担を生んでいる。

BMW(自動車)やドイツテレコム(電気通信)、ロバート・ボッシュ(自動車部品)、SAP(ソフトウエア)、シーメンス(電機)などドイツの大手メーカーはこうした課題を解決するため、Catena-Xというアライアンスを立ち上げた。自動車業界全体をカバーする同名のプラットホームを開設する。

アライアンスにはBMWのほか、フォルクスワーゲン(VW)、ダイムラーといった同国の他の大手自動車メーカーも加盟していることから、各メーカーのプラットホームに情報を個別に入力する必要がなくなる。参加企業は手間とコストを大幅に削減できる。

Catena-Xでは市場の需給状況を早期に把握することもできる。参加する全サプライヤーが各部品の生産能力に関するデータ、自動車メーカーが必要とする部品の量に関するデータをそれぞれ入力すれば、部品の供給不足が発生するかどうか、あるいは発生するとすればいつ頃なのかを事前に予測できるようになるため、メーカーは早い時点で対策を取れる。供給不足を回避できないにしても影響を緩和できると期待されている。

各部品の生産で発生するCO2の量をサプライヤーが入力すれば、完成車メーカーはライフサイクル全体で車両が排出するCO2の総量を計算することや、CO2排出量の少ない部品を手がけるメーカーを簡単に見つけることができるようになる。これにより自動車業界全体で排出されるCO2の量を減らすことも可能になる。また、金融市場では環境と人権を基準に投資・融資先を選別する動きが急速に強まっていることから、参加企業は資金調達面でリスクを軽減できる。

同アライアンスは中小企業を含め可能な限り多くの企業が参加することを期待している。参加企業が多ければ多いほど、プラットホームの効果が高まるためだ。

アライアンスへの参加を仮に自動車メーカーが取引の前提条件に設定すれば、サプライヤーにとっては加盟以外の選択肢が実質的になくなる。

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