欧州議会が対中投資協定の批准凍結

欧州議会は20日の本会議で、欧州連合(EU)と中国が昨年末に基本合意した「包括的投資協定」の批准手続きを凍結する決議を賛成多数で可決した。新疆ウイグル自治区での人権問題に絡んだEUの対中制裁に中国側が反発し、欧州議会議員などを対象に報復制裁を科したことを受けた措置。決議に法的拘束力はないが、投資協定の批准には欧州議会の承認が不可欠で、早期発効は困難な情勢だ。

決議は賛成599、反対30、棄権58で採択された。決議は中国による報復制裁は「根拠がなく、恣意的なものだ」と非難。中国による制裁解除が批准手続きを再開する条件になると表明した。

欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)は記者会見で「投資協定の批准手続きを進めるのにふさわしい環境ではない」と発言。欧州委は協定の早期発効を目指していたが、人権問題を巡って中国との関係が悪化している状況での批准・発効は難しいとの見解を示した。

一方、EU中国政府代表部は21日に声明を発表し、中国による報復制裁はEUの行動に対する「正当な対応」だと反論。中国は当初から相互協力を促進しており、「EUの歩み寄りを期待する」と表明した。

2014年にスタートした投資協定をめぐる協議は難航が続いていたが、昨年12月末に7年越しの交渉がようやく妥結した。中国経済を取り込んで新型コロナウイルスで打撃を受けた経済を再生させたいEUと、米国の政権交代を前にEUとの関係を強化したい中国の思惑が一致した格好で、中国側は産業補助金の透明性向上や、参入企業に対する技術移転の強要禁止などを受け入れた。ただ、欧州議会は以前からウイグル族の強制労働や香港の民主派弾圧を問題視しており、中国が3月下旬にEUへの報復制裁を発動したことで同国への反発が広がっていた。

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