ヴォノヴィア―競合ドイチェ・ヴォーネンと合併へ―

ドイツ最大の賃貸住宅会社ヴォノヴィアは24日、競合ドイチェ・ヴォーネンと合併合意したと発表した。同国では家賃の上昇に対し市民と左派政党の批判が強まっていることから、合併により規模の効果を実現。コスト削減を図る。

合併は株式公開買い付け(TOB)を通して実施する。ヴォノヴィアはドイチェ・ヴォーネン株を1株当たり52ユーロで買い取るほか、ドイチェ・ヴォーネンの2020年度配当を1株当たり1.03ユーロ支給する意向。ドイチェ・ヴォーネンの株主は1株当たり53.03ユーロを得ることになる。これは前営業日に当たる21日の終値を17.9%、過去3カ月間の加重平均株価を約25%上回る水準で、ドイチェ・ヴォーネンを約180億ユーロと評価したことになる。50%超の株式確保をTOBの成立条件としている。

ヴォノヴィアは合併後、住宅保有数が55万件、時価総額がおよそ480億ユーロとなり、欧州最大の賃貸住宅会社となる。ドイツ市場シェアは買収後も3%にとどまるため、合併合意は独禁当局から承認される見通しだ。8月末の買収手続き完了を見込んでいる。

ドイツでは住宅不足を背景に大都市の家賃が近年、急上昇。低所得者のなかには長年住んでいた賃貸住宅の家賃を払えなくなる人が出ている。社会民主党(SPD)、緑の党、左翼党の左派3党が政権を握るベルリン州ではこれを受け、家賃に上限を設定する法律が昨年、施行された。同法に対しては昨年、違憲判決が下されたが、市民の不満はくすぶり続けている。

賃貸住宅大手からの所有権はく奪を目指す運動も行われている。3,000件超の物件を持つ企業に保有住宅を相場以下の値段で州政府に譲渡することを、住民投票を通して義務付ける意向だ。

ヴォノヴィアのロルフ・ブーフ社長はこれを念頭に、家賃の上げ幅を2024年まで年1%以下にとどめるほか、25年と26年もインフレ率未満に抑えることなどを州政府に提案すると表明した。

ヴォノヴィアは15~16年、ドイチェ・ヴォーネンに敵対的なTOBを仕かけ、失敗した経緯がある。今回は賃貸住宅業界への逆風を背景に両社の反目が解消。友好的なTOBを行う。

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