ドイツのアンゲラ・メルケル首相と国内16州の首相は5月27日のテレビ会議で、新型コロナウイルス用ワクチンの接種対象を12~15歳にも拡大することを決議した。欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は独ビオンテックと米ファイザーが共同開発した製品を同年齢層に接種することを28日に承認したことから、独ロベルト・コッホ研究所(RKI)の予防接種常任委員会(STIKO)が勧告を出せば、12歳以上の人は全員、接種を受けられるようになる。ただ、STIKOは12~15歳の全員が現時点でワクチン接種を受けることに懐疑的なため、当面は基礎疾患のある子供に制限される可能性がある。
同国ではコロナワクチンの接種対象がこれまで16歳以上に制限されてきた。15歳未満に接種しても安全かどうかについてのデータがなかったためだ。だが、ビオンテックとファイザーが12~15歳を対象とする治験で100%の有効性と安全性が確認されたと4月末に発表したことから、すでにカナダと米国では同年齢層の接種が解禁されていた。
メルケル首相と州首相はこれを踏まえ、今回の決議を行った。EMAの今回の承認を踏まえSTIKOが勧告を出せば、12~15歳の子供は優先接種の対象となっていない16~60歳未満の市民と同様に、6月7日から予約を取ることができるようになる。
STIKOがビオンテック/ファイザー連合のワクチンを12~15歳に全面解禁することに懐疑的なのは、同年齢層を対象とする治験の参加者が少なく、正しいリスク評価を下せないとみているためだ。米国で行われた同治験に参加したのは2,260人で、実際に本物のワクチンの接種を受けたのはその半分の1,130人にとどまる。
STIKOはこれを踏まえ、基礎疾患のある子供に対象を制限したうえで12~15歳の接種を勧告する可能性がある。病気を抱える子供では接種のメリットがデメリットを上回る。
メルケル首相は「子供の接種は極めてデリケートな行為だ」と述べ、STIKOに理解を示している。ただ、イエン・シュパーン保健相は12~15歳の全員が接種を受けられるようにする意向を示しているため、最終的にどうなるかは現時点で定かでない。STIKOの勧告に強制力はない。
12~15歳が接種を受ける場合は基本的に開業医を利用することになる。ただ、各州は独自の判断でワクチン接種センターでも接種を受けられるようにしたり、特別な接種プログラムを実施することができる。
ワクチンの接種を受けなくても生徒は学校の対面授業に参加できる。メルケル首相は「子供のワクチン接種を両親が間接的に強要されることはない」と明言した。