水素プロジェクト62件を選定、ドイツが総額83億ユーロを助成へ

ドイツ政府は5月28日、水素経済実現に向けたプロジェクト計62件を支援することを決めた。欧州連合(EU)の「欧州の共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の枠組みで州とともに総額83億ユーロの補助金を交付する。欧州委員会の承認を年内に取り付ける予定だ。ペーター・アルトマイヤー経済相は「我々は水素技術で世界1位になる」と抱負を述べた。

支援プロジェクトは水素の「生産」「インフラ」「製造業での利用」「運輸部門での利用」の4分野からなる。生産分野では計19の取り組みを助成。グリーン水素の電解能力で2ギガワット(GW)を確保する。これはドイツが2030年の達成目標とする規模の40%に相当する。三菱重工業が蘭石油大手シェルなどとハンブルク州で実施するプロジェクトも補助金交付の対象となる。

インフラ分野では計15のプロジェクトを支援する。総延長1,700キロメートルのパイプラインが敷設されることになる。

産業分野の利用では水素製鉄や、グリーン水素を用いた化学品・合成燃料製造など合わせて16件のプロジェクトを助成する。ドイツで生産事業を展開する鉄鋼大手は外資系のアルセロール・ミタルも含めて全社が支援を受ける。

運輸分野では自動車、航空機、船舶などの動力源を化石燃料からゼロエミッションのものへと転換することを後押しする。アンドレアス・ショイアー交通相は同分野の動力源の95%以上を現在、化石燃料が占めていると述べたうえで、「グリーン水素と燃料電池は~すべての輸送手段で~純粋な電池輸送機械を補完するものだ」と指摘。炭素中立(カーボンニュートラル)の実現に向けては特定の技術に偏らないこと(技術的中立性)が重要だとの認識を示した。

政府は83億ユーロの支援を通して330億ユーロの投資が喚起されるとみている。

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