緑の党の政権獲得で独のEU政策転換も、欧州共同債の恒常化などを提言

コロナ禍からの復興に向けて欧州連合(EU)が特例として導入する共同債務方式の基金を、加盟国に資金を移転する恒常的な基金に発展させることを、独緑の党が提言するもようだ。ドイツは「コロナ復興基金」を一回限りの例外として承認したが、共同債には原則反対の姿勢を保っている。緑の党が9月の連邦議会選挙で政権を獲得した場合、同国は従来の方針を180度、転換する可能性が出てきた。財政、金融政策などを担当する同党の4議員の提言書をもとに5月31日付『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。

EUは新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた経済の再生に向けた復興基金の設立を昨年12月の首脳会議で決めた。7月に運用を開始する見通しだ。

同基金は欧州委員会が市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、新型コロナによる経済の打撃が大きい国に補助金と融資の形で配分するというもの。規模は7,500億ユーロで、資金は欧州委がEUの高い信用力を生かして債券を発行して調達する。EUが全体として借金し、共同で債務を負って苦境にある国を支援する格好で、事実上の共同債務方式となる。

緑の党の4議員はコロナ危機の終息後も、新たな基金の設立を通してEUから加盟国への資金供与を続けることを提唱した。基金の規模は域内総生産(GDP)の1%に相当する年1,300億ユーロ強。財源としてはプラスチック税、デジタル企業税、金融取引税、EU共通の企業税などの税収のほか、環境債などの起債を考えている。同基金から資金を得る加盟国に対しては環境保護やイノベーション、法治国家などの面で一定の義務を課す。財政状況の悪い国がEUから得る資金を流用して構造改革を棚上げにすることは認めないと強調している。

4議員はこのほか、◇ユーロ加盟国共通の預金保険保証制度(EDIS)を導入し銀行同盟を完成させる◇加盟国への融資を通して雇用を守る企業に手厚い助成を行うコロナ特例措置(失業リスク緩和のための緊急支援=SURE)の恒常化◇資本市場同盟の枠組みで加盟国の倒産法、税法、会社法を調整し欧州金融市場の統合を進める――なども提唱している。これらの措置によりEUの経済力を高めるとともに、ユーロをグローバルな基軸通貨として確立させ、覇権をめぐる米中の争いのなかで欧州の価値と利害を守れるようにする狙いだ。

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