ドイツとノルウェーを結ぶ高圧送電線「ノルトリンク」の開通式が5月27日、行われた。両国は同送電線を通して余剰電力を融通し合い、電力の供給と価格を安定させる考え。独メルケル首相は電力の需給調整で重要な役割を果たす原子力と石炭火力発電をともに全廃するドイツで同送電線が持つ意義は大きいと強調した。
ノルトリンクは独北部のヴィルスターとノルウェー南部のトンスタを結ぶ総延長623キロの送電線で、516キロを海底ケーブルが占める。再生可能エネルギー電力を両国間で融通する目的で2016年に着工した。ドイツからは風力発電、ノルウェーからは水力発電の電力をそれぞれ供給する。送電能力は1,400メガワットで、ドイツの360万世帯の電力需要に相当する。
風力発電は風が強く発電量が多くなりすぎると送電網に過度の負担がかかり、大規模な停電につながる恐れがあることから、ドイツではそうした場合、送電網事業者が風力発電の停止を要求。発電できなかった分の補償金を風力発電パークの運営事業者に支払っている。そのコストは電力料金に上乗せされて最終消費者が負担する。ノルトリンクが開通したことで今後はそうした無駄を減らすことができる。逆に、国内の発電量が少ない場合はノルウェーから電力を輸入し供給不足を回避できるようになる。
ただ、ドイツの電力不足解消に対するノルトリンクの貢献は当面、限られる見通しだ。背景には国内の送電網拡充が進んでいないという事情がある。
同国では原発廃止政策を受け、原発依存度の高かった南部地域で発電能力が低下している。このため政府は国内の送電能力を拡大し北部から南部への供給量を増やす計画だが、送電網増設への反対運動が強く実現が遅れている。ノルウェーから電力を調達しても主な需要地である独南部に供給できる量は限られる。
ノルトリンクの建設費用は約18億ユーロに上った。ノルウェー国営送配電事業者スタットネットが50%、オランダの国営送配電事業者テネットとドイツ復興金融公庫(KfW)がそれぞれ25%を出資している。