セクハラから女性社員を守ることは雇用主の義務

同僚に無理やりキスをした社員を即時解雇することは妥当との判決(訴訟番号:8 Sa 798/20)をケルン州労働裁判所が4月に下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はIT関係の業務を行う男性被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。原告を含む被用者8人は2019年9月26、27日にホテルに宿泊し会議を行った。原告は勤務後の深夜、複数の同僚とホテルのバーで歓談。その際、正社員に採用されたばかりの女性Lに、Lが拒否したにもかかわらず自分の上着を何度もかけようとした。その場にいた他の同僚からは止めるように注意を受けた。

お開きとなった後はLの部屋の前までついてきて、室内に一緒に入りたいと伝えた。Lが拒否すると、Lを突然、抱き寄せてキスしようとした。Lから押しのけられたにもかかわらず、原告は再び抱き寄せ、無理やりキスをした。Lは原告を突き放して自室に逃れ、内側から施錠。原告はその後、メッセージアプリで「悪く思わないでくれ」と伝えた。

Lはこの出来事を上司に伝えた。雇用主は事態を重くみて、事情を聴取したうえで10月15日付の文書で原告に即時解雇を通告した。

原告はその取り消しを求めて提訴したものの、1審で敗訴。2審のケルン州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、Lへのセクハラ行為でレッドラインを超えたことを原告は明確に認識していたと指摘。女性社員をセクハラから守るという雇用主の義務を踏まえると、被告が原告を雇用し続けることはできないとして、即時解雇は妥当だとの判断を示した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。

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