血液製剤製造の独ビオテストは1日、親会社である中国の科瑞集団(Create Group Corporation)が同社からの撤退を検討していると発表した。理由は明らかにしていない。メディア報道によると、世界の覇権をめぐる米中対立が背景にあるもようだ。
科瑞は2018年、ビオテストの普通株89.88%を13億ユーロで取得し、子会社化した。科瑞は16年にも血液製剤の英バイオ・プロダクツ・ラボラトリー (BPL)を買収しており、同分野でグローバルに事業を展開していく計画だった。
米当局は科瑞のビオテスト、BPL買収計画にそれぞれ疑義を示した。血液製剤の原料である血漿の米国における提供者と患者の個人データに科瑞がアクセスできるようになることを問題視したのだ。科瑞はこれを受け、両社の米国事業を買収対象から除外することを余儀なくされた。
米国は世界の血漿供給の約60%を占めるうえ、血液製剤市場規模も断トツで大きい。また、欧州などと異なり薬価規制がないことから、製品の販売価格を高く設定できるという事情がある。
科瑞はビオテストとBPLの米国事業を取得できなかったことから、グリーバルに事業を拡大するという当初の目的を達成できなくなっている。ビオテストのミヒャエル・ラムロート社長は昨年、「中国人(科瑞)の構想はそれ以来、うまく行かなくなった」と述べていた。
ビオテストは本社所在地のドライアイヒに建設中の新工場が近く完成する見通し。今後は来春の出荷開始に向けて米国を含む当局の承認を得ることになっている。承認手続きには計3億ユーロもの資金を要することもあり、科瑞は同社から早急に撤退したい考えとみられる。