新型コロナウイルスの感染者に接触した被用者が当局の命令で自主隔離を命じられ、仕事をできなくなった場合、雇用主は隔離期間中の賃金と社会保険料を全額、負担しなければならない。「賃金継続支給(Lohnfortzahlung)」の義務があるからである。ただし、感染防止法ではその費用の補償を当局に申請できることが記されている。このルールに絡んだ係争で、コブレンツ行政裁判所が5月に判決(訴訟番号:3 K 107/21.KO、3 K 108/21.KO)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判はラインラント・ファルツ州にある企業が同州を相手取って起こしたもの。同社では感染者に接触した被用者2人が保健当局から自主隔離を命じられた。期間は1人が6日、もう1人が2週間だった。
原告は2人に賃金と社会保険料を支払った後に、その費用の補償を同州に請求したところ、補償対象となったのは隔離開始の6日目以降に限られていたことから、最初の5日間についても補償を支払うよう求めて提訴した。
一審のコブレンツ行政裁はこの訴えを退けた。判決理由で裁判官は、隔離を命じられた被用者の賃金と社会保険料支出の補償を雇用主は基本的に請求できると確認したうえで、役務の提供を義務付けられた者が自らに責任のない理由で「長くない期間(nicht erhebliche Zeit)」、仕事をできない場合も報酬の請求権は失われないとした民法典(BGB)616条第1文の規定を指摘。隔離を命じられた原告企業の社員2人はこれに相当すると認定し、隔離期間が14日以内であれば、雇用関係が1年以上の被用者については賃金と社会保険料を雇用主が負担しなければならないとの判断を示した。14日以内の隔離期間中、勤続1年以上の社員に給与を継続支給するリスクは雇用主にとって計算可能なためと根拠付けている。
原告と被告には控訴が認められているため、判決は確定していない。