データセンターの排熱で地域暖房、KDDI子会社がドイツ初のプロジェクト発案

フランクフルト市地域エネルギー会社マイノバとKDDI傘下のデータセンター運営会社テレハウス・ドイチュラント、不動産開発のインストーン・リアル・エステートは8日、データセンターの排熱を利用した地域暖房プロジェクトを発表した。データセンターの排熱を地域の熱供給に利用するのはドイツで初めて。これまで使われてこなかった“資源”を有効活用することで、エネルギー消費と二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減し、地球温暖化防止に寄与する考えだ。

インストーンはフランクフルト中央駅の北側にあるガルス地区に「ヴェストヴィレ」という新住宅地を建設している。約1,300世帯が入居し、3,000人が生活する見通し。

ヴェストヴィレの向いにはテレハウスのデータセンターがある。このため、インストーンの責任者とテレハウス独法人のベラ・ヴァルトハウザー最高経営責任者(CEO)は住宅地区とデータセンターが隣接することで生じ得る問題点を話し合った。ヴァルトハウザーCEOがその際、データセンターの排熱をヴェストヴィレに供給することを提案。両社がマイノバと市当局に働きかけた結果、実施することが決まった。

データセンターの冷却水を循環方式でヴェストヴィレに供給する。ただ、それだけでは水温が低いため、ヒートポンプ2基を設置。1基目で水温を30度から60度、2基目で70度へと引き上げる。温度の低い通常の水を使う場合に比べエネルギー消費量を約80%も低減できる。

ヴェストヴィレの熱需要は年4,000メガワット時に上る。データセンターの排熱を利用した温水でそのうち60%以上を賄う計画。残り40%未満は環境に優しいマイノバの地域熱供給がカバーする。2023年初頭から供給を開始する予定だ。CO2排出量は従来型暖房に比べ年400トン少ないという。

フランクフルトは世界有数のデータセンター集積地で、市内には現在60カ所以上ある。このため、ヴェストヴィレのプロジェクトが成果を挙げた場合、市は他のデータセンターの排熱も活用する意向だ。ペーター・フェルトマン市長は「データセンターの排熱利用に向けたマイノバとパートナーの共同プロジェクトは今後、何が可能かを示すものだ」と期待感を表明した。

データセンターの排熱利用を促進するための研究者と企業、基礎自治体のイニシアチブ「DCヒート」は先ごろ公表したレポートで、市内のオフィスと住宅の暖房需要を30年以降、データセンターの排熱ですべて賄うことができるとの見方を示した。

上部へスクロール