ドイツのアンゲラ・メルケル首相は米国から帰国後の18日、大規模な洪水被害を受けたラインラント・ファルツ州アールヴァイラー郡を視察した。洪水と土砂崩れでライフラインや住宅が壊滅的な打撃を受けた現実を目の当たりにして、表現しようがないと絶句するとともに、被害者に向けて「私たちはあなた方のそばにいる」と寄り添う姿勢を示し、迅速な支援を約束した。21日の閣議で3億ユーロ以上の緊急支援を決定する意向だ。
今年は昨年までの干ばつと打って変わって春以降の降水量が多い。6月以降に強い雨が続いたこともあり、地盤は緩んでいる。そうした状況のなかで独西部を集中豪雨が襲ったため、ラインラント・ファルツとノルトライン・ヴェストファーレンの両州で大規模な洪水と地崩れが起きた。
渓谷地であるアールヴァイラーを流れるアール川は、監視システムが整備されたライン川などの大河川と異なり洪水の事前予測が難しいうえ、豪雨があると沢水などが一気に集まりやすい。今回の集中豪雨の規模は尋常でなかったことから、「100年に1度」の大災害に発展した。地球温暖化の影響が指摘されており、こうした被害は今後、頻発するというのが専門家の見方だ。
メルケル首相はこれを踏まえ、温暖化対策には巨額の資金が必要だと指摘したうえで、温暖化対策を怠ることで発生するコストはさらに大きいと明言。「気候変動に対する戦いで我々はより迅速にならなければならない」と述べた。
洪水被害の死亡者は20日午後時点で170人に達した。行方不明者が多いことから今後さらに増えるのはほぼ確実。被災地では道路、鉄道、電力、水道、電気通信などのインフラが破壊されている。復旧には年単位の時間がかかる見通しだ。