半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)がドイツに半導体工場を建設する可能性が出てきた。劉徳音会長は26日の株主総会で、「ドイツを真剣に検討している」と明言した。同国の主要顧客と今後、工場について協議する意向だ。建設するかどうかの決定をいつ下すかは明らかにしていない。
『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、独経済省は過去数カ月間、ドイツの産業立地条件の魅力をTSMCに伝えてきたという。同省のスポークスマンは、「企業の個々の投資の可能性についてはコメントしない」としながらも、マイクロエレクトロニクスや半導体チップの生産といった将来性の高い分野の投資は原則的に歓迎するとの立場を表明した。
ドイツは労働者の質の高さやインフラの充実など優れた産業立地条件を持つ。その一方で、高い税率や工場建設の認可手続きの煩雑さなどマイナス面もあることから、TSMCの誘致に失敗する可能性も懸念されている。野党・自由民主党(FDP)のクリスティアン・デュル院内副総務は米電気自動車(EV)大手テスラの独工場建設が遅々として進まないことを挙げたうえで、外資が進出しやすい環境を整えることは「次期政府の課題だ」と述べた。
ドイツでは現在、米グローバルファウンドリーが半導体を製造している。米インテルも欧州工場を同国に設置することを検討中だ。同社のパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は今春に訪欧した際、アジアに伍して半導体を生産できるようにするための枠組み条件を創出することを欧州各国の政府に要求した。