新型コロナウイルス用ワクチンの接種完了者をそれ以外の人よりも優遇すべきだとの考えを表明する政治家が増えてきた。接種率が集団免疫の獲得に必要な水準を大幅に下回っているうえ、感染第4波到来の可能性が高まってきたためだ。簡易テストで陰性を証明した人を接種完了者ないし感染からの回復者と同等に扱う現行ルールでは感染の再拡大を防げないとの危機感がある。
ヘルゲ・ブラウン官房長官は日曜版『ビルト』紙のインタビューで、非接種者は簡易テストで陰性になった場合でも実際には感染しているケースが比較的多いことを踏まえ、今後はレストランや映画館、スタジアムの訪問を禁じることもあり得るとの考えを示した。そうした行動の自由は接種完了者のみが享受すべきとの立場だ。接種を義務化することはないと強調している。ホルスト・ゼーホーファー内相は同調の立場を表明した。
野党では緑の党のロベルト・ハーベック共同党首が、「ワクチンを接種する必要はない。だが、自らが接種しないからといって他の全員が自由を断念することを当てにすることはできない」と述べ、接種を回避・拒否する人のために接種完了者が自由を制限されることは不当だとの認識を示した。
一方、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)のアーミン・ラシェット首相候補(CDU党首)は25日のテレビインタビューで、ワクチン接種の義務化と接種を間接的に強要することに反対の立場を表明した。「秋に入ってもワクチン接種率が依然として低すぎるようであれば、検討しなければならないが、現時点では不要だ」との立場だ。
ロベルト・コッホ研究所(RKI)によると、集団免疫を獲得するためには15~59歳の85%以上、60歳以上の90%以上が接種を完了する必要がある。接種完了者は27日時点で人口の49.4%で、今後も増えるものの、接種に批判・消極的な市民も多いことから、集団免疫の獲得は極めて難しいとみられている。このため消極的ないし無関心の市民に接種を促すことが大きな課題となりつつある。
人口10万人当たりの新規感染者数(7日間の発生数)は27日時点で14.5人となり、前日の14.3人から増加した。直近の底である6日(4.9人)からは約3倍に増えている。水準自体はなお低いものの、スペインなど高感染地域からの旅行客の帰国や、感染第3波終了に伴う警戒感の低下を背景に今後さらに増えるのはほぼ確実。現在のスピードで増え続けると9月末には150人に達するとする専門家の試算もある。
ノルトライン・ヴェストファーレン州ではコロナ制限措置が26日から再強化された。7日間の発生数が24日まで8日連続で10人を超えたことから、州の決まりに従い、小売店の入店人数規制が再び導入されたほか、屋内でのマスク着用が全面的に義務化された。ゾーリンゲン市は同数値が全国で最も高く、67.2人(26日)に達した。日本人が多く住むデュッセルドルフも42.6人(同)で、上から6番目に付けている。