独16州の保健相は2日の会議で、12~17歳を対象とする新型コロナワクチンの接種を本格化することを全会一致で決議した。国の予防接種常任委員会(STIKO)は健康な子供への接種を現時点で勧告していないが、すでに一部の州で新学期が始まり集団感染の発生が懸念されることから、同年齢層の全員に接種の機会を提供することにした。
欧州連合(EU)では現在、独ビオンテックと米ファイザーが共同開発した伝令RNA(mRNA)ワクチンと、米モデルナ製のmRNAワクチンを12歳以上に接種することが承認されている。
だが、STIKOは12~17歳を対象とする治験の参加者数が少なく、正しいリスク評価を下せないとして、同年齢層への全面的な接種勧告を見合わせている。接種対象を◇肥満や重症心不全、慢性腎不全など特定の基礎疾患を持つ◇家族や身の回りにワクチン接種を受けられない基礎疾患の持ち主やワクチンが十分な保護効果をもたらさない人がいる――子供に制限すべきとの立場だ。
一方、国と州は夏休み明け以降に学校が感染のホットスポットになることを警戒。感染力の極めて高いデルタ型が主流となっていることは懸念を増幅させている。学校閉鎖が行われれば、すでに深刻な子供の学習不足は助長され、働く親も再び大きな負担を負うことになる。今回の決議には希望する12~17歳の全員がワクチン接種を簡単に受けられるようにすることで、「夏休み明けのより安全な授業のスタートに寄与できる」との一文が盛り込まれた。
12~17歳がワクチン接種を受けられる場所はこれまで一部の州を除き、ホームドクターなどの開業医に限られていた。今後はワクチン接種センターと、保護者の勤務先の産業医でも受けられるようになる。提供されるワクチンはビオンテック/ファイザー連合ないしモデルナの製品。
12~17歳のうち今月1日までにワクチン接種を少なくとも1回受けた人は20.5%で、18~59歳の同62.1%を大幅に下回っている。接種完了者も9.9%と18~59歳(52.7%)の5分の1以下にとどまる。
州保健相会議では、ワクチン接種の完了者を対象に9月からブースター(追加免疫)接種を行うことも決議した。対象となるのは免疫不全症患者、超高齢者、要介護者および、専らウイルスベクター型のワクチン(アストラゼネカとジョンソン・エンド・ジョンソン製品)接種を受けた人。新型コロナワクチンは時間の経過とともに保護効果が弱まることから、追加接種を行うことで高い免疫力を保てるようにする。接種完了から6カ月以上が経過した該当者にmRNA型ワクチンでブースター接種を行う。