接種完了者優遇を国と州が決議、無料検査は10月10日まで

ドイツのメルケル首相と国内16州の首相は10日の会議で、新しいコロナ規制を取り決めた。ワクチン接種の進展と、感染力の高いデルタ型変異株の流行を踏まえたもので、感染状況の判断基準を変更。また、接種率を一段と高めデルタ株に対する集団免疫を獲得するため、未接種者の行動の自由を接種完了者、感染からの回復者よりも強く制限する。

ワクチン接種を完了した人の割合(人口比)は10日時点で54.8%に達した。少なくとも1回の接種を受けた人は62.4%に上る。

コロナ禍の発生当初は人口の60%が接種を完了すれば集団免疫を獲得できると目されていた。だが、感染力の高い変異株が出現したことでハードルは上昇。メルケル首相は会議後の記者会見で、「接種率が70%を大幅に超えて80%に向かうことが好ましい」と述べた。国と州はこの事情を踏まえ、コロナ規制の適用で接種完了者と回復者を優遇することで、未接種者に接種を促す政策を取り決めた。

人口10万人当たりの直近1週間の新規感染者数(7日間の発生数)が35人以上の地域では遅くとも23日から、飲食店や床屋、病院、屋内スポーツ施設、宿泊施設の利用や屋内イベントへの参加に際して陰性証明の提示が義務付けられるものの、接種完了者などの抗体保有者は免除される。また、接種完了者などは感染者と濃厚接触しても、感染の症状が出なければ隔離義務を免除される。

陰性証明はPCR検査だけでなく、抗原検査も認められる。有効期間はRCR検査で48時間、抗原検査で24時間。

抗原検査は現在、週に1度であれば国が費用を全額負担しているが、10月11日からは健康上の理由でワクチン接種を受けられない人や妊婦、18歳未満を除きすべて本人が負担することになる。ワクチン接種を希望すれば9月下旬までに接種を完了できることから、それ以降については検査費用を国が負担することはできないとの立場だ。検査費用を本人負担とすることで、接種圧力を高める狙いがある。

メルケル首相は、ワクチン接種は個々人だけでなく、社会の全成員を保護するものだと指摘したうえで、接種は誰でも実行できる共同体への貢献だと明言。未接種者に対し速やかに接種を受けるよう強く促した。

感染状況の判断に際してはこれまで、7日間の発生数が最重視されてきた。この数値が高い水準で推移し続けると、病院の集中治療キャパシティが限界を超えるという認識に基づいたもので、医療崩壊を避けるためには大きな意味を持っていた。だが、感染すると重症化したり死亡するリスクの高い高齢者と基礎疾患を持つ人を中心にワクチン接種率が高まってきたことから、今回の会議では、今後は接種率、重症患者数、医療機関の負担も加味して状況判断することを決めた。

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