再生エネベースの航空機燃料、世界初の量産開始

再生可能エネルギー電力ベースの「持続可能な航空燃料(SAF)」を量産する施設の開所式が4日、ドイツ北部のヴェルルテで行われた。再生エネベースのSAFを量産するのは世界初。式典にはアンゲラ・メルケル首相などが参列した。

SAFは炭素中立度の高い航空機燃料。これまでは農業廃棄物や廃食油を原料として製造されてきた。

再生エネを用いて作るSAFは「PtL(パワー・トゥ・リキッド)」と呼ばれる。再生エネで水を電気分解して水素を取り出し、二酸化炭素(CO2)と合成して製造する。

ヴェルルテの施設は温暖化防止活動に取り組む非営利団体アトモスフェア(atmosfair)が運営する。来年第1四半期からフル稼働体制に入る。生産能力は1日当たり1トン(8バレル)。製品は航空大手のルフトハンザが5年間、最低でも年2万5,000リットルを引き受ける。

ルフトハンザは同燃料を顧客に提供する。すでに航空貨物子会社ルフトハンザ・カーゴと、物流大手キューネ+ナーゲルに販売することを取り決めた。

ドイツでは航空機燃料にPtLを0.5%混合することが2026年から義務化される。これは年5万トンの需要に相当する規模だ。30年には同比率が2%へと引き上げられる。

メルケル首相は「グリーンなケロシンを2030年までに年20万トン生産できるようにするという我が国の目標を達成するためには、生産能力を大幅に高めることが重要だ」と指摘。PtLは当面、価格が極めて高く、入手可能な量も限られるが、技術の発展と市場の成長でこれらの問題を克服できるとの見方を示した。

スヴェーニャ・シュルツェ環境相は「この技術が機能することを今、示すことができれば、その設備の輸出チャンスを創出できる」と述べ、PtL生産設備の世界市場でドイツが優位に立つことに期待を示した。

人間の活動で排出される温室効果ガスに占める航空業界の割合は3.5%に上る。航空機は自動車などと異なり動力源を電動化することが難しいため、PtLの低コスト生産技術を確立することは重要な課題となっている。

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