ロック・テック―欧州初のリチウム工場を独東部に建設―

独カナダ系の資源会社ロック・テック・リチウムは10日、ドイツ東部のブランデンブルク州に水酸化リチウム工場を建設する計画を発表した。水酸化リチウムはリチウムイオン電池の正極材に投入される物質。同州には米電気自動車(EV)大手テスラの車両・巨大電池工場と、独化学大手BASFの電池正極材工場が建設され、電池産業の主要な集積地となる見通しであることから、白羽の矢を立てたもようだ。ディルク・ハルベッケ最高経営責任者(CEO)は『ハンデルスブラット(HB)』紙に、「ブランデンブルクは電動車バリューチェーンのほぼすべてをカバーする欧州の最初の地域の1つになる」と明言した。当局の補助金交付を工場設置の前提条件としている。

計画が順調に進めば、ポーランド国境のグーベン工業団地内に12ヘクタールの用地を取得し、2024年から生産を開始する。投資額は最大4億7,000万ユーロ。カナダのオンタリオ州ジョージア湖で自ら採掘するリチウムを使用して水酸化リチウムを製造する。年産能力は電動車50万台分の需要に相当する2万4,000トンに上る。160人の雇用を見込む。

同工場はテスラが建設中のグリュンハイデ工場、BASFのシュヴァルツハイデ工場との距離がともに100キロ未満にとどまる。テスラはグリュンハイデ工場で将来的にEVを年50万台、生産する見通し。BASFも欧州の自動車メーカーに正極材を幅広く供給すると見込まれることから、現地の潜在需要は大きい。HB紙によると、ロック・テックが水酸化リチウムの販売に向けて交渉している正極材メーカーにはBASFが含まれているもようだ。

ハルベッケCEOは今後の需要拡大をにらみ欧州に計5工場を設置する考えも明らかにした。毎年1工場を新設する方向という。資源の再利用にも注力する方針で、30年までに原料の約50%を廃電池のリサイクルで賄えるようにする目標だ。

ロック・テックのシュテファン・クラウゼ最高財務責任者(CFO)は電動車分野のスタートアップ企業を対象に出資活動を展開する投資家でもある。同氏はドイツポストの配達EV製造子会社(ストリートスクーター)を買収予定の投資会社(オーディン・オートモティブ)で筆頭株主となっている。

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