化学大手の独BASFは14日、バイオインフォマティクス分野の独スタートアップ企業コンピュトミクス(Computomics)に他の投資家とともに資本参加すると発表した。コンピュトミクスは栽培地域の特性に適した品種改良を速やかに特定するAIを開発する企業。気候変動の進展に伴い各産地に適した品種の変化が予想されることから、将来性を高く評価して出資を決めた。出資額と出資比率は明らかにしていない。
コンピュトミクスのAIは農作物のゲノム(全遺伝情報)のほか、栽培地域の気候、将来の気候変動、土壌の微生物叢、遺伝的多様性、農業慣行などの変数も踏まえて交配の可能性をすべてシミュレーション。数百万に上る候補のなかからそれぞれの産地に最適の品種を特定し、顧客の種子メーカーに提案する。種子メーカーは同社から得た情報をもとに生産性が高い品種や病害や乾燥に強い品種を開発できる。交配は自然に存在する種の多様性を活用して行うことから、「遺伝子組み換え作物に対し競争力のあるオルターナティブ」(コンピュトミクスのセバスチャン・シュルトハイス社長)となる。
欧州連合(EU)は包括的な環境政策「欧州グリーンディール」を実施している。コンピュトミクスの技術を用いると気候変動に対応するとともに、農薬散布と施肥量を大幅に低減できる品種を開発できることから、同政策に貢献できる見通し。BASFのベンチャー投資子会社であるBVCのマルクス・ゾリビーダ社長は、今回の出資を「グリーンディールを実行するためのイノベーションを促進するというBASFの戦略」に合致するものだと述べた。
コンピュトミクスはBASFなどから調達する資金で研究開発とグローバルなマーケティング・販売活動を強化する意向だ。