ドイツの次期政権樹立に向けて交渉中の社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党は10月27日、これまで厳格な新型コロナウイルス感染防止策の法的な根拠となってきた「全国的なエピデミック状況」認定を更新せず、11月25日付で失効させる方針を表明した。ワクチン接種が進展したことで住民全体の健康リスクが低下していることから、感染を防ぐという名目で人権を強く制限し続けることは正当化できなくなったと判断した。同認定の失効後も緩やかな規制については当面、継続できるようにするものの、感染力の高い新たな変異株が出現するなどして状況が悪化しない限り来年3月20日までに全面解除する意向だ。
全国的なエピデミック状況認定は感染防止法で定められたルール。感染症の流行が深刻な場合、連邦議会の決議で認定を行う。有効期間は3カ月で、必要がある場合は議会がその都度、延長決議を行う。
同認定は新型コロナ感染の流行が始まった昨年3月から継続的に行われてきた。連邦政府と州政府はこれに基づいて、マスク着用や社会的距離、接触制限、店舗営業の禁止など人権を部分的に制約するルールを議会の承認なしに導入することができた。制限措置について議会の審議と決議を回避することで、迅速な対応を取れるというメリットがあった。
だが、国内在住者の3分の2がワクチン接種を完了し重症化・死亡リスクが低下しているなかで、大幅な人権制限を伴う規制を継続することに対しては疑問の声が強まっている。
SPDなど3党はこうした変化を踏まえ、全国的なエピデミック状況認定の打ち切りを決めた、11月25日からは、マスク着用や衛生義務、屋内感染防止ルールなどを州政府が引き続き行えるようにするものの、広範囲の営業禁止など過度の制限措置は実行できなくする。