欧州連合(EU)は10月26日、ルクセンブルクでエネルギー相理事会の臨時会合を開き、深刻化しているエネルギー価格高騰への対応策を協議した。加盟国の多くは減税や補助金などを通じて家計や企業への短期的な負担軽減策を講じており、会議ではエネルギーの安定調達に向けた中長期の対応策について協議したが、EUレベルの措置で合意することはできなかった。
EUではコロナ禍からの経済回復に伴う世界的な燃料需要の高まりなどを背景に、天然ガスの価格が高騰しており、これが電気やガス料金の値上がりを招いている。今回の会合に先立ち、スペインやフランスは価格変動を抑制するため、天然ガスの共同調達や備蓄を検討するとともに、エネルギー市場の構造改革を進める必要があると主張。ガス価格と電力料金が連動する現行システムの見直しなどを要求していた。
これに対し、ドイツやデンマーク、オランダなど9カ国は現在の危機的状況は一時的なもので、市場改革の必要はないと反論。25日に発表した共同声明で「価格高騰はグローバルな要因によるもので、EUエネルギー市場の構造に干渉するのは十分な注意が必要だ」と指摘した。
理事会でも意見の隔たりを埋めることはできず、ガス備蓄の共同調達や備蓄、卸電力市場の改革、投機取引に関する規制の見直しといった中長期の対策について、エネルギー規制機関間協力庁(ACER)が分析結果をまとめた後、改めて協議することで合意した。
EU議長国スロベニアのブルトベツ・インフラ相は「今日のエネルギー危機はEUが低炭素経済への移行を加速させるチャンスでもある」と強調。EUがエネルギー分野で自立するうえで、原子力が有効な手段になるとの考えを示し、EUタクソノミー(気候変動など環境問題の解決に貢献する持続可能な経済活動を6つの目的に分類した、EU独自の基準)における原子力の扱いについて、欧州委員会にルール策定を急ぐよう求めた。