血液製剤製造の独ビオテストは5日、スペインの製薬大手グリフォルスが同社を対象に実施する株式公開買い付け(TOB)を支持すると発表した。グリフォルスはすでにビオテストの親会社である中国企業、科瑞集団(Create Group Corporation)が保有するビオテスト株をすべて取得することで合意済み。他の株主の保有株をTOBで確保し、合併する意向だ。普通株を1株当たり43ユーロ、優先株を同37ユーロで買い上げる。
科瑞は2018年、ビオテストを子会社化した。科瑞は16年にも血液製剤の英バイオ・プロダクツ・ラボラトリー (BPL)を買収しており、同分野でグローバルに事業を展開していく計画だった。
だが、米当局は科瑞のビオテスト、BPL買収計画にそれぞれ疑義を示した。血液製剤の原料である血漿の米国における提供者と患者の個人データに科瑞がアクセスできるようになることを問題視したためだ。科瑞はこれを受け、両社の米国事業を買収対象から除外することを余儀なくされた。
米国は世界の血漿供給の約60%を占めるうえ、血液製剤市場規模も断トツで大きい。また、欧州などと異なり薬価規制がないことから、製品の販売価格を高く設定できるという事情がある。
科瑞はビオテストとBPLの米国事業を取得できなくなり、グリーバルに事業を拡大するという当初の目的を達成できなくなったことから、ビオテストの売却方針を表明。9月になってビオテストの普通株90%弱と優先株1%をグリフォルスに売却することで合意した。買収金額は11億ユーロ。取引の成立には独禁当局の承認が必要となる。
ビオテストはグリフォルスによる買収を支持する理由として◇TOB価格が妥当◇合併により経営資源と製品ポートフォリオが拡大する◇グリフォルスが確約した投資により製品開発・生産を加速できる――を挙げた。