ドイツ政府は11月26日、南アフリカなどアフリカ大陸南部の8カ国を「新型コロナウイルス変異株地域」に指定すると発表した。対象地域からドイツに入国できる人は28日0時以降、ドイツ国籍保有者や在住者に制限されている。また、自主隔離の義務はワクチンの非接種者だけでなく、接種完了者と感染からの快復者にも例外なく適用されている。期間は入国後14日間で、短縮することはできない。
変異株地域に指定されたのは南ア、ボツワナ、エスワティニ、レソト、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、ザンビア。南アフリカは25日、新たな変異株「B.1.1.529」が感染者から検出されたことを明らかにした。同株は細胞に侵入する際のカギとなるスパイクタンパク質の変異が32カ所と極めて多いうえ、ワクチンの効果が従来株に比べ弱い可能性がある。感染力は現在主流のデルタ株を上回るとの懸念も持たれている。世界保健機関(WHO)は26日、同株を「懸念される変異株」に指定し、「オミクロン」と命名した。
ドイツでは隔離義務が28日からとなっていたが、同国南部のバイエルン州政府は26日夜に南アからの到着便をミュンヘン空港の隔離エリアに着陸させたうえで、PCR検査を実施。全乗客に14日の隔離を命じた。
同株はすでにドイツを含む欧州の多くの国で多数、検出されている。ベルギーのフランク・ファンデンブルック保健相は26日、エジプトから11日に帰国した1人が同株に感染していたことを明らかにした。発症は22日であることから、帰国後に多くの人に接触した可能性がある。また、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は30日、19日と23日に採取した検体からオミクロン株の痕跡が検出されたと発表しており、同株は南ア当局の発表以前から欧州に存在していたことになる。
日本政府は29日、ドイツを「水際対策上特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」に指定した。帰国者はワクチン接種証明書の有無にかかわらず、検疫所が確保する宿泊施設などで入国翌日から3日間の隔離が義務付けられている。自宅などでの待機も含めると隔離期間は計14日間となる。
新型コロナワクチン製造の独ビオンテックは26日、同社が米ファイザーと共同開発した製品がB.1.1.529に対し有効かどうかを速やかに調べ、2週間以内に結論を出す意向を表明した。ワクチンの効果を弱める「エスケープ変異株」であることが確認された場合は、6週間以内にワクチンを改良。臨床試験を経て100日以内に出荷を開始する考えだ。