欧州連合(EU)の欧州委員会は11月25日、域外の第三国から域内への渡航を制限する措置の見直しを提案した。新型コロナウイルスワクチン接種者を優先的に受け入れるのが主眼。来年1月10日から接種者に対する規制を緩和する一方で、未接種者の入域は厳しく制限する。加盟国の承認を経て正式決定となる。
EUは現在、ワクチンの接種を終えていることを条件に、すべての国からの観光客を受け入れているが、EUで承認されたワクチンが使用されることが原則となっている。この規制を緩和し、EUで未承認でも世界保健機関(WHO)が承認しているワクチンであれば接種した人の入域を認める。ただ、出発前に受けたPCR検査で陰性だったことを証明しなければならない。
未接種者でも180日以内に新型コロナ感染症から快復し、EUのデジタルCOVID証明と同等とみなされる証明書を持つ人は、1月10日から観光など不要不急の目的でも入域できる。この場合も出発前検査の陰性証明が必要となる。
ワクチン接種者の証明書の有効期間は、EUのデジタルCOVID証明と同じく9カ月とする。渡航者の出身国で発行される証明書がEUと同等と認定されない場合も、加盟国の判断で認めることが可能となる。
新型コロナ感染が落ち着いている「安全な国」のリストに指定された国(25日現在で約20カ国。日本は対象外)からの渡航に関するルールも変える。現在はワクチン未接種者でも陰性証明があれば観光目的の入域が認められるが、22年3月1日からは禁止となり、ワクチン接種者や快復者、重要な公務やビジネスを目的とした渡航に限って認める。
安全な国リストを巡るルールも大きく見直す。過去14日間の人口10万人当たりの新規感染者数が75人以下とする認定要件を1月10日から100人以下に緩和する。ただ、毎週の感染検査実施数に関しては、現在の10万人当たり300人から600人に引き上げる。
3月1日からはさらに、リスト対象国の旅行者を優先する制度自体を廃止し、いかなる国の人でも上記の条件を適用して入域を認める。国ではなく個人単位で域内への渡航の可否が決まるシステムとなる。
欧州委はこの新制度について、リストが2週間ごとに状況に応じて見直されるため旅行の計画を立てにくいという問題が解消されることや、世界的にワクチンの普及が進み、個人の意思で接種を受けることができるようになっているためと説明している。