欧州連合(EU)の欧州委員会は3日、新型コロナウイルスワクチン接種などを証明する「EUデジタルCOVID証明書」の適用期間を1年延長する方針を発表した。欧州では変異株「オミクロン」が猛威を振るうなか、ワクチンの追加接種が進んだことなどから規制緩和に踏み切る国が相次いでいるが、新たな変異株の出現などによって再び事態が悪化した場合に備え、適用期間を1年延長して2023年6月30日までとする。欧州議会と閣僚理事会の承認を経て、関連規則を改正する。
EUデジタルCOVID証明書は加盟国がワクチン接種者や検査で陰性だった人、コロナに感染して快復した人に発行するEU共通の証明書で、証明書を持つ人は入国時の検査や一定期間の隔離なしに域内を自由に移動できる。同制度はコロナ禍での国境を越える移動の円滑化や、苦境に立つ観光業への支援を主な目的として、昨年7月に正式運用が開始された。
欧州委は適用期間の延長に加え、ワクチン接種証明に関して、証明書を発行した加盟国以外で接種した分も含め、全体の接種回数を正確に記載する仕組みの導入を提案した。EU市民が複数の加盟国でワクチン接種を受けた場合、接種回数が誤って記載される事態を防ぐ狙いだ。
さらに新型コロナワクチンの治験参加者に対し、加盟国がCOVID証明書を発行できるようにすることを提案した。EUが承認していないワクチンの接種者に証明書を発行することになるが、同措置によって製薬会社は治験の参加者を集めやすくなり、ワクチンの継続的な研究・開発を後押しすることができる。