欧州委がデータ法案発表、産業データの共有・活用促進へ

欧州連合(EU)の欧州委員会は2月23日、域内で生成されるあらゆる産業分野のデータを企業間や官民間で広く共有し、有効活用するためのルールを定めた「データ法(Data Act)」案を発表した。データへのアクセスと利用を保証する公平で明確なルールを整備してデータの単一市場を構築し、個人やビジネスが生み出す膨大なデータを技術革新や経済成長につなげる狙いがある。

欧州委によると、2025年に世界のデータ量は18年の約5倍に拡大する見通しだが、インターネットにつながった家電製品や自動車、産業用ロボットなどから得られるデータの約8割は有効活用されていない。データ法が成立すると、企業間などでより多くのデータが利用可能となり、28年までに域内総生産(GDP)を2,700億ユーロ押し上げるとみられている。

法案はまず、コネクテッド製品(スマート家電や産業機械など)が生成するデータについて規定している。こうしたデータは現在のところ、メーカーが独占的に取得するケースが多い。これを利用者自身がデータにアクセスし、他のメーカーを含む第三者と共有できるようにする。これにより、利用者は少ない費用でより質の高いアフターサービスを受けたり、事業を効率化することが可能になる。産業機器の機能に関するデータを共有できるようになれば、工場や建設現場などで運転サイクルや生産ライン、サプライチェーンの管理を最適化できる。農業部門では農家が天候、温度、土壌の水分、GPS信号などのデータを即座に分析し、収穫量や収穫期を予測したり、収量を最適化することが可能になる。

また、中小企業は最低限のコストでデータにアクセスできるようになり、データ共有に関して強い交渉力を持つ大企業と不公平な契約を結ぶ必要がなくなる。欧州委は中小企業を不当な契約条項から保護するため、モデル契約条項を作成する方針を示している。

クラウドサービスを提供する事業者に対しては契約上の義務を課すとともに、データとクラウドの相互運用性に関する新たな標準化のフレームワークを設け、利用者が追加コストなしでプロバイダを容易に変更できる環境を整える。

法案は今後、欧州議会と閣僚理事会で議論される。欧州委のベステアー執行副委員長(競争政策担当)は声明で「誰が、どのような条件でデータにアクセスできるかを明確にし、消費者と企業が自身に関するデータをより良くコントロールできるようにしたいと考えている。データ法は堅実で公正なデータ駆動型経済の構築に貢献し、2030年までに社会・経済のデジタル変革を実現するうえで重要な鍵となる」と述べた。

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