自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は4日、独北部のヴォルフスブルクにある本社工場の隣接地区に新工場を設置すると発表した。同社が次世代の電気自動車(BEV)の第1弾と位置付ける「トリニティ」を生産。BEV分野で先行する米テスラを追撃する。
ヴォルフスブルク市ヴァルメナウ地区に新工場を建設する。投資額は約20億ユーロ。2023年春に着工し、26年から生産を開始する。
トリニティは通信機能を通して交通・事故情報などを恒常的に相互交換するBEV。充電時間の大幅短縮と700キロメートル以上の航続距離を想定している。「レベル4」の自動運転車とする意向だ。製品ライフサイクル全体を通して二酸化炭素(CO2)の排出を実質回避する気候中立も実現する。BEV用の次世代車台「SSP(スケーラブル・システム・プラットホーム)」を採用する初の量産車となる。
生産効率も大幅に引き上げる意向で、1台当たりの生産時間を10時間とする。これを実現するために、モデルバリエーションの削減、部品点数の削減、生産のさらなる自動化、生産ラインのスリム化を図る。
ヴォルフスブルク本社工場は設備が老朽化している。ヘルベルト・ディース社長はこれを受け昨年、競合メーカーに比べコストが高いとして、大規模な人員削減の可能性を監査役会に打診。従業員代表の強い反発を買い、一時は解任観測も浮上していた。今回の工場設置計画はこれを受け、従業員代表との協議も交えて取りまとめたものだ。新工場の建設が決まったことで同地の従業員の雇用は維持される見通しとなった。