独北部のニーダーザクセン(NS)州がLNG(液化天然ガス)ターミナルの実現に向け推進本部を設置する。オーラフ・ショルツ連邦首相が2月28日の国会演説で同国初のLNGターミナルの早期設置方針を打ち出したことを受けた措置。NS州のオーラフ・リース環境・エネルギー・建設・気候保護省は2日、北ドイツ放送のインタビューで「大きな課題だ」と述べた。
ショルツ首相はウクライナへのロシアの軍事侵攻を受け、パイプラインで輸送されるロシア産天然ガスに強く依存したこれまでのエネルギー供給体制の見直し方針を打ち出した。その一環として、天然ガスの調達先を多様化するためにLNGの受け入れ基地となるターミナルを早急に確保する意向だ。演説ではNS州のヴィルヘルムスハーフェン港、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州のブルンスビュッテル港で計画されているLNGターミナルの2カ所を挙げた。
ドイツは米トランプ前政権からロシア産天然ガスへの依存度が高いことを強く批判され、米国産LNGの購入を要求された。これを受けLNGターミナル設置に向けた動きが出てきたものの、パイプラインで輸送される非加工の天然ガスに比べ割高なことから、計画は停滞ないし棚上げ状態となっている。
ヴィルヘルムスハーフェン港の計画はエネルギー大手のユニパーが着手。洋上LNG受入基地プロジェクトの事業化に向け、浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)の長期傭船契約を商船三井と締結したものの、十分な規模の需要を確保する見通しが立たないことから2020年11月に凍結された。
NS州政府はこのプロジェクトを再生させる意向だ。リース氏は計画、認可、建設を迅速に実現するためには全体をコーディネートする必要がある、と推進本部設置の狙いを語った。また、投資家が投資を決定するためには認可前の時点で確約を与える必要があるとの認識も示した。ヴィルヘルムスハーフェンとブルンスビュッテルのLNGターミナル建設は24年までに実現可能だとしている。
NS州ではエルベ川河口のシュターデにLNGターミナルを設置するプロジェクトもある。ショルツ首相は演説でこの計画に触れなかったが、リース氏は早ければ26年にも実現できると述べた。