ウルフスピード―欧州への工場進出を検討―

半導体の有力企業である米ウルフスピードが欧州に工場を建設することを検討している。欧州は電動車が急速に普及するなど需要が大きいうえ、欧州連合(EU)が域外からの半導体メーカー誘致に注力しているためだ。グレッグ・ルーヴェ社長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、「欧州はわが社のさらなる工場にとって良い可能性を持っている。最終的には資金調達の条件にかかっているのだが」と述べ、補助金の交付が工場進出決定の極めて重要な要件になるとの立場を示唆した。米インテルは今月中旬、ドイツなど欧州数カ国に計330億ユーロを投資し、半導体工場や研究開発拠点を設置する計画を発表しており、ウルフスピードも後に続く可能性が出てきた。早ければ2~3カ月以内に決定を下す考えだ。

ウルフスピードは炭化ケイ素(SiC)ベースのウエハーと半導体チップを製造している。SiC半導体は従来のシリコン半導体に比べ電力消費量と発熱によるエネルギー損失が少ないことから、電気自動車(BEV)などの走行距離を拡大できる。冷却装置を小型化できることから車両の軽量化にもつながる。充電速度が速くなるメリットもある。

SiC半導体需要は現在、小さいものの、急速に拡大している。仏コンサルティング会社ヨールによると、市場は年率30%程度のスピードで拡大しており、2025年までに20億ユーロ規模に拡大する見通しだ。自動車向けは市場全体の3分の1を占める。ウルフスピードは売上高を現在の5億ドルから26年までに20億ドルへと拡大する考えだ。

その実現に向け欧州進出を検討している。すでに同地の政策当事者と接触しており、遅くとも年末までに決定を下す見通し。工場進出を決めた場合は23年に着工し、26年から生産を開始する。

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