欧州連合(EU)欧州委員会は11月30日、域内の包装廃棄物を削減するための規則案を発表した。一部の使い捨て包装を禁止し、包装材のリサイクルを義務付けるなどして、2040年までに各加盟国で1人当たりの廃棄物を18年比で15%減らすことを目指す。規則案は今後、欧州議会と閣僚理事会で審議される。
EUでは包装廃棄物のリサイクルや再利用の促進に主眼を置いた「包装廃棄物指令」が施行されているが、欧州委によると、域内における廃棄物は過去10年間に20%以上増えており、市民1人当たりの排出量は年間約180キログラムに上る。対策を講じなければ、30年までにさらに19%増える可能性があり、特にプラスチック容器包装の廃棄物は同年までに46%増えると予測されている。欧州委はこうした状況を改善するため、50年までの気候中立を目標に掲げた「欧州グリーンディール」の柱の1つである「循環型経済行動計画」に沿って、包装廃棄物の削減に向けた規制強化策を検討してきた。
規則案によると、包装材メーカーは原則としてすべての包装材・梱包材を30年1月までにリサイクルできる設計にする必要がある。加盟国はあらゆる包装廃棄物の分別回収システムを整備したり、ペットボトルやアルミ缶などを対象に、容器の返却時に小売価格に上乗せした保証金を返金するデポジット制度を導入する。
包装材を使用する事業者も規制の対象となり、レストランやカフェなどで提供される食品・飲料の使い捨て包装や、野菜・果物の使い捨て包装、ホテルがアメニティとして提供するシャンプーのミニボトルなどは禁止の対象となる。一方、コーヒーなどの飲料や料理の持ち帰り用容器、アルコール飲料・水・ソフトドリンクの容器、通信販売の配送時の包装などに関しては、一定割合を再利用・詰め替え可能な包装で提供する必要がある。具体的には、飲料は30年までに20%、40年までに80%を再利用可能な容器で提供するか、消費者が持参した容器で提供できるようにしなければならない。
欧州委の試算によると、新規則が施行された場合、包装廃棄物の処理に伴う30年までの温室効果ガス排出量は現行ルール下での6,600万トンから4,300万トンに減少し、環境汚染による損失も64億ユーロ減らすことができる。さらにリサイクル産業の活性化により、30年までに60万人以上の雇用が創出される。