エネルギー大手の独ユニパーは11月30日、ロシア国営天然ガス大手のガスプロムを相手取り国際仲裁裁判手続きを開始したと発表した。ガスプロムからの供給停止に伴い巨額の損失を計上していることから、損害賠償を請求する。クラウスディーター・マウバッハ最高経営責任者(CEO)は「わが社はこの手続きを極めて厳しい態度で進める。それは株主、従業員、納税者に対する義務だ」と明言した。
ガスプロムは6月中旬、ガス管「ノルドストリーム1」の供給量を容量の40%へと削減した。ガスプロム最大の国外顧客であるユニパーはこの結果、契約量の40%しか供給を受けられなくなった。現在は供給が完全に停止されている。
ユニパーはこれを受け、極めて割高なスポット市場や先物市場での代替調達を余儀なくされている。都市エネルギー公社などの顧客には従来の契約に基づき低価格で一定量を供給しなければならないことから、同社は巨額の損失を抱え込み、2022年1-9月期にはドイツの上場企業では戦後最大の純赤字(403億700万ユーロ)を計上した。政府は同社を救済するため、国有化する意向だ。国の支援額は最大330億ユーロに達すると見込まれている。
天然ガスの代替調達でこれまでに発生した損失は少なくとも116億ユーロに上る。今後さらに膨らむ見通し。ガスプロムが契約通りに供給を行っていればこれらの損失が出なかったことから、ユニパーは損賠手続きに踏み切った。
ユニパーは今回、ロシア子会社ユニプロを法的・人事的に可能な限り自社から切り離す方針も明らかにした。すでに情報プロセス、キャッシュフロー、ITシステムは分離している。
ユニプロはロシアで発電所を計5カ所、運営している。発電能力は11ギガワット(GW)強、従業員数は4,300人。2021年の営業利益(EBIT、調整済み)は2億3,000万ユーロで、ユニパーの同利益の約20%を占めた。
ユニパーは昨年末、ユニプロの売却手続きを開始した。2月下旬にロシアがウクライナに侵攻したことを受けて手続きを中断したものの再開。9月には売却合意が成立した。ただ、ロシア当局の承認が得られていない。マウバッハ氏は、ユニプロの分離手続きを一段と進めることでロシア事業に付随するリスクから他の国の事業を守る考えを表明した。
RWEも損賠請求へ
ガスプロムの供給削減・停止に対しては独エネルギー大手RWEも損賠請求を行う意向だ。『ハンデルスブラット』が報じ、同社が追認した。請求額など詳細は明らかにしていない。ドイツ企業ではこのほか、VNG、Sefe(ガスプロムの元子会社で旧社名はガスプロム・ゲルマニア)が同様の措置を取る可能性がある。