ヴィンタースハル―ロシアから全面撤退―

独化学大手BASFの天然ガス・石油子会社ヴィンタースハル・デーエーアーは17日、ロシア事業からの全面撤退方針を発表した。現地合弁会社の所有権を事実上、はく奪されたことを受けた措置。これに伴い2022年10-12月期(第4四半期)に減損処理などの費用53億ユーロを計上する。

プレスリリースによると、同社出資の現地合弁会社が露国営天然ガス大手ガスプロムに販売する炭化水素の価格が、12月22日付のロシア大統領令と同30日付の政府決議を受け過去にさかのぼって引き下げられた。マリオ・メーレン社長は、同社はガスプロム向けの販売を3月までさかのぼって国定価格で行うことをすでに9月時点で強要されていたと述べた。

今月16日に発行した大統領令ではロシアの合弁会社に対する外資企業の議決権が一切、考慮されなくなった。このためヴィンタースハルは現地合弁に影響力をまったく行使できない状況にある。

同社はこれまでロシア事業からの全面撤退を拒否してきた。自らのイニシアチブで撤退すればシベリアの採掘権など巨額の資産を賠償なしでロシアに奪われるとみていたためだ。だが、同社の現地資産は今回、ロシア政府側の措置で実質的にはく奪された。メーレン氏は「プーチンはそれを簡単に奪い取った」と明言した。

BASFのマルティン・ブルーダーミュラー社長は週刊紙『ツァイト』に、ヴィンタースハルからの資産はく奪はドイツ政府がガスプロムの独子会社ガスプロム・ゲルマニアを国有化したことへの報復だとの見方を示した。

ヴィンタースハルのロシア事業はドイツ政府の国外投資保険の対象となっている。メーレン氏は保険金の支払いを請求する意向を表明していることから、最終的に納税者負担が生じる可能性がある。

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